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哀 愛 逢 祈りの碑〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

「また、あの日が来ましたね。皆さまのことを考えています!」

3月11日、東北の大震災以前からご縁のあった石巻、西光寺の「和尚さん」にテキストを送ると、今年(2022年3月10日)、お寺と遺族の会「蓮(はす)の会」、その他有志の協力で「哀愛逢(あいあいあい)祈りの碑」を石巻南浜津波復興祈念公園内に建てたことを知った。

亡くした人を愛し続け、祈りをささげる遺族の気持ちを「哀(かな)しみの中でも 愛するあの人をいつも心に 逢(あ)えることを道しるべに」と刻んだ震災祈念モニュメント。碑は台座を含め高さ2.2メートルの白御影石製。2人が寄り添う姿をかたどり、親子、恋人同士など、見る人それぞれに大切な人をイメージさせる(河北新報、2022年3月11日)。

毎年この日になるとイベントを催し、年々「これでもか!」というように大きくなっていくことに多少の違和感を覚えてはいたが、これが本当に遺族にはつらいものだと、和尚さんが話してくれた。趣旨から離れて上滑りしている傾向にあるのだ。

「遺族はあの日の記憶に今も震えて、自分のつらい記憶をイベントにして欲しくないとにぎやかな追悼儀式から目を背け、午後2時46分のサイレンも耳をふさいでじっと耐えている」

津波直後、友人の父母兄弟の通夜に、涙と鼻水でお経にならなかったと伝えてくれた西光寺住職の樋口伸生和尚は、「遺族を励まそうと『元気を出して』『時間が解決してくれる』などと声を掛ける」のはかえって負担になると言う。

「世間の騒々しさから離れて、仏の導きの声と自分の内側の嘆きを重ねること。悲しみと苦しみは癒えることがないことを認めて、全てを大切に生きていく決意を固めることが着地点です。3・11は心を痛めている人が静かに呼吸できる1日、いたわり合う日になるべき」と説く。「宗教に関心がない人は、宗教的なことに嫌悪感を覚えますが、義務教育と社会経験だけで人生のさまざまなつらいことに対応できない。宗教的な風情が必要と、ようやく世間の人が気付いたのかなとも思います」

「碑は震災以外でも、癒えない悲しみと、膨らむ大切な人への思いが支え切れなくなったとき、心のよりどころとして訪れて欲しい」との願いだ。

皆さんの霊が豊穣の大地から天に上り、そして戻って、大地と海をさらに肥やしていくように、いつも心の中でお祈りしています。合掌。

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。