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侍ジャパンの裏ばなし〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第 32回 侍ジャパンの裏ばなし

野球の「や」の字も知らない私が何を書くのか? と思う人もいるだろう。しかも数カ月も前に終わってしまったチャンピオンシップのこと。日本のテレビではいまだいろいろ話題が出る。特に栗山英樹前監督の人間的な素晴らしさにはほれぼれする。メンバー個人に対しての敬意、思いやり、信頼感……。5月31日で正式に退任した。

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)前から、どのチャンネルでも大谷翔平選手が出てくるので、仕方なく見始めた、というわけだ。監督、メンバーの人柄を映し出して、それだけで心温まる時間を得た。

栗山監督はチームを集めた時に、まずメンバーひとりひとりに手書きの手紙を送っている。「侍ジャパンというチームが日本の代表なのではなくて、あなたが日本の代表として、皆で力を合わせて戦い抜きましょう」という、信頼と団結を表わした内容の手紙だ。勝ち抜いた時、「チームが世界一」なのではなくて、「皆が世界一」なのだ、と。個人がチームの中に埋もれずにいられるよう、自信を持たせてくれたのだ。

試合前に小指を折ってしまった源田壮亮選手の意思を尊重し、チームから降ろさなかった。打率が素晴らしい村上宗隆選手の三振が続いていたが、準決勝の対メキシコ戦で栗山監督はこう言った。「今日の試合はお前のヒットで決めるから」。この監督の信頼に応え、侍ジャパンは決勝に進んだ。サンディエゴ・パドレスから来た、ダルビッシュ有選手は皆のまとめ役。そして、楽しんでゲームをしようというスタンス。36歳という年長者の願いは、野球離れになっている今の子どもたちに「少しでも面白いと思ってもらいたい」。ハーフだが日本語はよくわからない、セントルイス・カージナルスから来たラーズ・ヌートバー選手はチームに溶け込めるか心配だった。日本の選手たちは「たっちゃん」Tシャツを作り、全員着用でウェルカムを表明。ヌートバー選手の日本名、達治は祖父からもらった。涙が出るほどうれしかったらしい。

対アメリカの決勝戦直前にチームが集まり、大谷選手はひと言。「みんな、憧れている選手がいると思うけれど、今日だけは、その憧れをやめて欲しい。憧れてしまったら、自分たちは超えられないので。僕たちは勝つために試合をしているのだから」と、なんだか侍的な発言。

それはそうと、初のWBCにシアトル・マリナーズから出場したイチローさんは、どの番組にも顔を出さなかった。応援に駆け付けても良さそうなのに。テレビや新聞でもなんの話題もない。ネットでちらりと見てしまった。実は奥さんがその昔、アナウンサー時代に栗山監督と婚約していたが振られてしまって、それを根に持っているイチローさんが無視したようだ。

ネット記事を信じるか否かは、読者にお任せ。

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。