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シアトルのわが家の住民、その2〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

日本に戻ったがシアトルの家はそのまま賃している。住民はウクライナ出身の両親がいて、某航空会社に勤める極めてプライベートな男性。

2月、用事でシアトルに帰った時に失敗をしてしまった。いきなりドローンを持って庭に侵入したのだ。「シアトル市のゴミ出しやリサイクルなどの規則を守り、期日に家賃を納めてくれれば、私は住民の生活には干渉しない」と宣言したばかりだったのに。いつもはテキストで知らせるのだが、スマホを忘れて直行してしまったから。

家を貸しているために、今回はシアトル滞在中、知人の家にご厄介になっていた。そのオジサンが屋根のふき替えが終わり、どんな風にできたかとドローンを飛ばしチェックしている。満足そうに見せてくれた。

「それ、うちもやってくれる? うちの屋根もいつ頃ふき替えをしないといけないか考えなくっちゃ」

と言うと、喜んで来てくれた。オジサンがホストしている高校生を学校に送りがてらついでに寄ろう、ということになって車を発進させた直後、スマホを忘れたのに気が付いたのだ。でも、遅刻寸前! すぐ終わるから「ま、いいか」ということになったわけだ。

サーっと裏庭でドローンを飛ばし、家の上空をくるりと反対側までチェックし、こちら側に戻ったところだった。緩やかに屋根に近付いてきたと思ったら、ピタっとランディング。猫と鉢合わせしたヒキガエルのように、動かない!

「あっ、電池が切れた」

と言われても……。替えの電池持って来たんじゃなかったの? 遅かりし。

置きっ放しにするわけにはいかず、まずははしご。幸い隣家のスーザンがポーチにいた。説明すると快く貸してくれたが、問題は極めてプライベートなうちの住民。彼らの外のデッキからでないと屋根に届かない。電話で前もって知らせておかなかったことを後悔しながら、フロントドアをノックした。彼女が出てきたので説明をする。仕事中だろうか、うちの住民は出てこない。

オジサンが慎重に屋根に上り、ドローンを回収。ゆっくりゆっくりはしごを下りて、隣家に返し、全て終了。

家に帰ると案の定、うちの住民から「敷地内に入るときは前もって連絡をするべき」とのメッセージがスマホに入っていた。誰の敷地だ! と思いながらもひたすら謝るが、ひと言。

「屋根はこの夏ふき替えの必要なし。これであなたたちも安心して夏を楽しめるわね。良かったわ!」

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。