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『Interstellar』(邦題『インターステラー』)

宇宙への興味を駆り立てるSF 超大作 movie_interstellar1 今年最も楽しみにしていたクリストファー・ノーラン監督(『バットマン』シリーズ)の最新作。期待を裏切らないSF映画で、見終わったとたんもう一度劇場に戻りたいという衝動に駆られた。 環境破壊によって瀕死状態にある近未来の地球が舞台。人間の生活はかつての農耕生活に戻っていた。農夫になった元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)は、あるヒントを得て、NASAでボスだったブランド教授(マイケル・ケイン)が秘密裏に人類の移住先となる惑星を探していることを知り、計画に参加することに。10才の娘マーフはとどまって欲しいと哀願するが、彼は家族の未来のために宇宙に飛び立っていく。 ここまではほんの導入。物語は以後、惑星探しをする宇宙飛行を通して主人公らが体験する予期せぬ出来事が次々と描かれていく。人間臭いロボットが登場、ワームホールを通って太陽系を超え、氷に覆われた惑星に着陸し……。観客を魅了するアイ ディアとそれを視覚化する緻密な製作デザインと特撮が素晴らしく、『2001年宇宙の旅』や『未知との遭遇』 などを観て胸躍らせた観客には必見の娯楽性と物理性を兼ね備えたSF映画の傑作だ。 脚本は監督と弟のジョナサン・ノーランによるもので、コンサルタントには理論物理学者のキップ・ソーンが参加した。ジョナサンは相対性理論についてソーンによる長時間の教授を受け、正確な相対性理論を脚本に生かしたという。 ノーラン作品は、『インセプション』など彼独自の創造性や意外性が特徴的な反面、感情的な人間ドラマが希薄な傾向があった。だが本作では父と娘の愛を中心に据えて、人類を救う宇宙探索の遂行と娘への愛に引き裂かれる主人公の感情体験が物語を牽引していく。相対性理論による時間を超える光速の旅が、この父と娘にとってどんな体験と なっていくのか。物理と家族愛が縦糸と横糸となって壮大な映像的タペストリーを織り出そうという意欲的な作品でもある。 後半、クーパーがブラックホールに突入し、そこで次元を超える体験をする。3次元のルールである時間と空間に縛られて生き る人類にとっては、高次元での体験を想像することは難しいが、本作ではその至難を驚異的な映像で見せてくれる。本作の白眉と言えるシーンで、この部分だけをとっても映画史に残る作品と言える。本作を観て宇宙や理論物理学への興味を持つ人も多いはずで、それが優れたSF映画を見る醍醐味ではないだろうか。 上映時間:2時間49分。シアトルではシネコン等で上映中。 [新作ムービー]

映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。