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ミニマリズムで怠慢から脱出?〜シニアが何だ! カナダで再出発

在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。

ミニマリズムで怠慢から脱出?

ミニマリストになろうと心がけている。わが家は物が増える一方。そもそも、ルームシェアする71歳のジェームズは手芸が趣味で、関連物が空間を埋め続ける。おまけになんでもキープしたがる。われわれの年代は、両親が貧しい時代を過ごしたせいか、物はやたらと捨てず節約・倹約。農家が作った米はひと粒も残さず食べるのが礼儀と教えられた。国は豊かになったが、良い時代に生きたブーマーは、自分たちだけいい思いをして未来を台無しにした、と若者に責められる。

◀︎秋の日本旅行の際、東京の友人が似顔絵を描いてくれた。作風に作者の個性がにじみ、彼がそばにいるように感じる

確かに、自分はおいしいものもうんと食べたし、日本、ギリシャ、米国、そして今はカナダに住み、欧州、東南アジア、韓国、メキシコ、ブラジルにも旅した。ハワイとアラスカは何度も行った。わが人生、早や75年。できることはやった(と思う)。いつ逝っても良いと言うのではないが、あまり欲がなくなった。次の目標を立てなければ、と漠然と思いつつ、やりたいことが浮かばない。

韓国語を習い始めたくらいか。10年近く付き合ってきた韓国系の相棒ジェームズに敬意を、という意味合いもある。退職直後は、多くの同年輩の日本人男性と同様に趣味はなく、だらんと日々を過ごしていた。ピックルボールをなんとなく始め、バンクーバーに移ってからは友人の誘いで社交ダンスも。やればできないことはない、と人は言う。ハングルも、アプリで毎日わずか5分の学習だが、数カ月でその仕組みがわかってきた。

韓国語の勉強にDuolingoのアプリを活用。「いつかアメリカへ」と、大学では英語を専攻していた。カナダ移住のため、実はフランス語の習得にシアトルの語学学校に2年通ったことも ▶︎

振り返れば、電化製品も必要なものは全てある。子どもの頃は電気屋の店先のTVでプロレスを見て興奮したものだ。氷の塊を入れた分厚い夏の収納庫も、いつからか電気冷蔵庫になった。ダイソンのコードレス掃除機、エアフライヤー付きトースター、スマートウォッチなども便利。スマホも新機種で新たに2年契約した。所持品を少なくすれば「終活」にもつながる、と頭ではわかっている。だが、毎日の趣味や食べること、ドラマ視聴と、目先のエンターテインメントに心奪われ、面倒なことはつい後回しだ。

◀︎ 整理整とんを開始する前の収納。まさに「押し入れ」で息が詰まりそう

いっそのこと、片付けを日課に入れてしまえば良いのか。韓国語もAIにおだてられ(?)1年間の有料講座に登録した。通うのが面倒なのでYMCAは解約。毎朝、わがコンドのロビー階にあるジムでトレッドミルに乗り、汗をかくのが気持ち良い。この勢いで、頑固なジェームズを説き伏せ、毎日のルーティンで物をどんどん捨てていこう。近所のチャリティーに出せば再利用も進む。

リラックスすること(=怠慢?)も大事だが、やる気を出すことも大切(=難しい)か。面倒がる前に、ひとつひとつを全力でやろう。残り時間は少ない。

手始めに寝室のクローゼットを片付けてスッキリ。勤務に必要だったビジネス・スーツも、悔しさをこらえて処分。でも、いくら捨ててもあまり代わり映えしない? あとは若い頃のブランド品をどうするか

ストコだと20ドルあればスポーツウエアがそろう。この前も、つい全色買いしてしまった。シニアの自分には見栄もないと思っていたが、物欲は残っているようだ

昔はよく人を食事に招いたが、近頃はまれに。凝った料理も出さなくなった。写真は、簡単かつ失敗しにくいチキン・パスタ、ペスト・ソースのサラダ添

月に1度、認知症の隣人を誘ってバンクーバーの老舗、グランド・オナー(Grand Honour)へ。ここの飲茶を食べに行くのもいわゆる「日課」のひと

歳を重ねた今、脂っこいものは控えているが、韓国焼肉だけはやめられない。お気に入りの店は、デバクボンガ(Dae Bak Bon Ga)

滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。