健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
新型コロナウイルス感染症と歯科
中国湖北省武漢で発生したとされる新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が世界的な広がりを見せています。日本でも、ここワシントン州でも、市中感染のステージに突入し、国を挙げて感染拡大の防止に取り組んでいます。歯科が治療の主体となる疾患ではありませんが、無関係と言い切れません。今回は新型コロナウイルス感染症を取り上げ、考えられる歯科との関連も書いていきたいと思います。
新型コロナウイルスと感染経路
コロナウイルス(Coronavirus)は、哺乳類や鳥類に病気をまき散らすウイルスのひとつで、ヒトにおいては風邪を含む呼吸器感染症を引き起こします。中でもSARS、MERSおよび今回のCOVID-19 のような新型ウイルスは、重篤な呼吸器感染症につながり、場合によっては死に至ることがあります。ウイルス粒子の特徴的な外観(王冠または太陽コロナを連想させる周縁)からその名が付き、ウイルスは二重構造の脂質の膜を有するためアルコールで壊れやすく、アルコール消毒が有効です。
遺伝子の解析から、SARSウイルスとの類似性が認められ、由来はコウモリと言われますが、コウモリからヒトへの感染経路の途中で介在するであろう動物は、現時点では明らかにされていません。飛沫感染や接触感染が主な感染経路で、ヒトからヒトへの感染が認められ、感染力は強く、インフルエンザの2、3倍とされます。インフルエンザの死亡率0.1%に対し、新型コロナウイルス感染症の場合は2%程度(インフルエンザの20倍)で、免疫力の弱い高齢者を中心に比較的肺炎に移行しやすいのが特徴です。厄介なのは、その症状が多様で、潜伏期間も1〜24日と幅があり、症状が出ない陽性患者からもウイルスは排出され、他人に感染させることがあります。
最近では、感染力の弱いS型(30%)と感染力の強いL型(70%)に分類できるとの報告もあり、ウイルスが感染途中で変異する可能性も示唆されています。
新型コロナウイルス感染予防法
通常のインフルエンザウイルスと同様の感染予防法が有効と考えられています。手指を石けんと温水で洗い、アルコール消毒も併用するとなお良く、うがい、外出先での良質なマスク着用なども予防策として挙げられます(ただし、マスクの有効性に関しては結論が出ていません)。人混みを避けることも重要で、十分な睡眠を取り、普段から免疫力を高める生活習慣を心がけることも大切だと思われます。
歯科の観点から予防するには
ウイルスは、痰やだ液でベタベタの環境でより長く生存できるため、予防には石けんでの手洗い、手指および周囲をアルコールでよくふき取ることです。また、口腔衛生が良い方がインフルエンザにも肺炎にもかかりにくいと言われており、口腔衛生の徹底は新型コロナウイルス予防にも有効と考えられます。
皆さま、くれぐれも注意してください。この感染症が1日も早く終息することを願うばかりです。