がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。
体内の「働き」を可視化する検査
とは? 核医学の世界へ
FDG PET/CT:がん細胞が通常の細胞よりも多くの糖を取り込む性質を利用して、全身のがんの広がりや再発の有無を調べます。ただし、この薬剤は炎症のある部分にも集まるため、画像に写ったからといって、必ずしもがんであるとは限りません。
アミロイドPET:アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパクを標的とする薬剤を使って、脳内への蓄積の有無を確認します。近年では、アルツハイマー病の進行を遅らせる治療薬「疾患修飾薬」の適応を判断する検査として注目されています。
PSMA PET/CT:前立腺がん細胞に特異的に発現するタンパクであるPSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的としたPET検査です。従来の検査では初期の前立腺がんの広がりを把握することは困難でしたが、この検査の導入により病変検出能力が劇的に向上しました。
セラノスティクスによる治療への応用
セラノスティクス(Theranostics)とは、治療(Therapy)と診断(Diagnostics)を組み合わせた医療技術です。同じ標的分子を利用して診断と治療を行うことが可能です。例として、前述のPSMAを標的とする薬剤にγ線を放出する放射性同位元素を結合させることで、PETなどの画像検査でがんの位置や広がりを可視化できます。一方、同じPSMA標的にα線やβ線を放出する放射性同位元素を結合させると、がん細胞を破壊する治療に応用できます。α線やβ線が周囲の細胞に強いエネルギーを与え、DNA損傷を引き起こすことで、がん細胞を効果的に死滅させるのです。
このように、病気の場所を診断し、同じ標的を使ってそのまま精密な治療まで行えることがセラノスティクスの大きな特徴です。近年では、がんの個別化医療においても注目されています。
放射線って危険じゃないの?
核医学検査で使われる放射性医薬品はごく微量で、放射線による影響は限られています。さらに、体内に長くとどまらず、数時間から数日以内に体外に排出されるよう設計されています。検査の種類にもよりますが被ばく量は、一般的なCT検査と同程度かそれ以下です。病気の早期発見や治療効果の評価といった「得られる利益」が「被ばくリスク」を大きく上回ると判断されたうえで使用されています。
核医学検査は、体内の機能を可視化する画像技術であり、がんや認知症の診療において重要な役割を担っています。痛みも少なく、安全に受けられる検査ですので、必要になった際には、安心してご活用ください。
尾谷知亮■奈良県生駒市出身。京都大学医学部卒業。日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本核医学会核医学専門医、日本インターベンショナルラジオロジー学会(IVR)専門医。現在はスタンフォード大学の核医学・分子イメージング部門で客員研究員として研究に従事。趣味は将棋、水泳、ランニング、経済の勉強。















