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ブレスト・アウェアネス~女性の命を守るヘルスケア Vol.8

女性の命を守るヘルスケア Vol.8

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

第8回 ブレスト・アウェアネス

ソイソース読者の皆さま、初めまして。今回はJapanese SHAREで臨床アドバイザーを務めるボストン在住の乳腺科医、田原梨絵が担当します。

乳がんの早期発見のために、皆さんが日頃から心がけていることはありますか? 「セルフチェックしているから大丈夫」と、マンモグラム検診を受けていない方、あるいは「定期的にマンモグラム検診を受けているから」とセルフチェックをしていない方、どちらも早期発見のチャンスを失っているかもしれません。

実はマンモグラム検診で見つかることが多いと思われがちな乳がんですが、マンモグラム検診で見つかるのは全体の半分です。残りの半分は何らかの自覚症状から見つかります。また、まれですが「中間期乳がん」という、検診と検診の間に主に自覚症状から見つかる乳がんがあります。これには前回の検診で発見されなかったもの、画像で見えにくいもの、しこりが急に大きくなったものが含まれます。検診で異常なしだったとしても、乳房の変化に気付いた場合、「検診で異常なしだったから大丈夫」と自己判断せずに、医療機関を受診することが大切です。

「ブレスト・アウェアネス」という言葉をご存知でしょうか? 自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識して生活することを言います。乳がんの早期発見のために役立つブレスト・アウェアネスを生活習慣として身に付けるために、以下の4つの項目を実践しましょう。

①自分の乳房の状態を知るために、日頃から自分の乳房を、見て、触って、感じる(乳房のセルフチェック)

②気を付けなければいけない乳房の変化を知る

③乳房の変化を自覚したら、次の検診を待たずに、すぐに医療機関へ行く

④40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける

「セルフチェックさえしていれば良い」「検診さえ受けていれば良い」と過信することなく、この4つの項目に気を付けてブレスト・アウェアネスを習慣にすることで、乳がんを早期発見できます。この項目のうち、2.については以下のポイントを押さえておきましょう。乳がんと聞くと「しこり」のイメージがあるかもしれませんが、しこり以外にもさまざまな症状があります。

乳房

・左右サイズの差・形の変化
・突出したしこり、乳房内・脇の下のしこり
・皮膚のくぼみやひきつれ
・むくみや赤み

乳頭

・変形・へこみ・ひきつれ
・赤み・腫れ・ただれ
・分泌物

セルフチェックを習慣にすることで、これらの変化に自分で気付くことができます。普段の自分の乳房と違う変化がないかどうかを確認しましょう。

また、生理周期、妊娠、授乳中の乳房の変化など、正常な乳房の変化を理解することもブレスト・アウェアネスには重要です。乳房の変化が必ずしも乳がんとは限らず、痛み・乳頭分泌・しこりなどの症状があっても、乳がんであるケースはそれほど多くはありません。変化に気付いたら慌てずに、かつ次の検診を待たずに、医療機関をすぐ受診しましょう。

セルフチェックは、月に1回程度行うようにするのがおすすめです。生理がある方は胸の張りが少ない生理後のタイミングで。生理がない方は毎月〇日、月初め、月末など時期を決めておきましょう。乳房セルフチェックは、いつでもどこでも気軽にできます。「入浴前後に鏡の前で」「寝ながら」「着替えのついでに」「シャワー・入浴中」など、自分のやりやすい時と場所を選んで行います。乳がんは、自分でも見つけられるがんです。ぜひ、セルフチェックを習慣にしてください。

最後に、乳腺・乳がんに関する正しい情報を届けるために乳腺科医の仲間と一緒に運営する非営利のYouTubeチャンネルを紹介させてください。乳房の症状、乳がん検診に関する情報から、乳がん治療の解説まで、さまざまな動画を配信しています。今回の内容をイラストでわかりやすく解説した動画もありますので、ぜひご覧ください。

乳がん大事典【BC Tube編集部】

・「ブレスト・アウェアネス〜自分の乳房を意識しながら暮らす〜」

・「2分でできる、乳房セルフチェック」

・「3分でわかる、この症状って乳がん?」

田原梨絵■Japanese SHARE臨床アドバイザー、一般社団法人BC Tube理事を務める、ボストン在住の乳腺科医、乳腺腫瘍内科医、MD。ダナファーバーがん研究所研究助手、MDアンダーソンがんセンターのリサーチ・インターンを経験。

SHARE 日本語プログラム

ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)
問い合わせ・患者サポートミーティング申し込み:​admin@sharejp.org
詳細:https://sharejp.org

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。

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1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。