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脂肪燃焼は体内環境作りから〜美ボディーをつくるトレーニング

シアトル地域レドモンドを拠点に活躍するプライベート・トレーナーの島田耕太さんが、自宅でできるトレーニング法を解説します。

美ボディーをつくるトレーニング

脂肪燃焼は体内環境作りから

これまでは一般的に、脂肪燃焼はカロリー計算を基準に考えられてきました。「カロリー・イン、カロリー・アウト」、つまりカロリーの摂取と使用のバランスにより体重の変動が起こるというコンセプトです。数値化すると理解しやすい、食べたり飲んだりする量をコントロールしやすいなど、さまざまなメリットがあります。問題は、人間の体はそんなに単純ではないということ。脂肪燃焼を目標として健康的に体重を落としていくためには、体内環境、特にホルモンバランスを理解する必要があります。

すい臓には、インスリンとグルカゴンという、2つの正反対の性質を持つホルモンが存在します。インスリンは「蓄え」、グルカゴンは「消費」が主な働き。インスリンがグルカゴンを分泌量で上回る場合、体はカロリーや栄養素を蓄える働きをします。一方、インスリンがグルカゴンを分泌量で下回る場合、体は消費、燃焼のプロセスを行います。どちらも、身体にとって重要な機能です。

インスリンの分泌量が増える条件としては、炭水化物の過剰摂取、頻回の食事などがあります。ただ、運動量、筋肉量、共に多い方はインスリンの受け取り可能な細胞も多いため、インスリンの分泌量が増えても糖尿病や肥満などへの影響は小さくなります。逆に、運動量、筋肉量、共に少ない方はインスリンの受け取り可能な細胞が少ないため、脂肪の蓄積が始まってしまいます。

炭水化物の摂取量と食事の頻度を制限することで、インスリン分泌を抑えることは可能です。もちろん、炭水化物は人間が生きるうえで欠かせない栄養素ですが、穀物を避けて野菜のみを摂取しても十分な量の炭水化物や糖質が得られます。運動量の多い方には足りない場合もあるので、疲労回復を目的に米や果物などで補います。食事は間食をなくし、1日3食から始めてください。食事の回数が多ければ多いほどインスリンが分泌され、落ち着く間がありません。これでは常に蓄える状態が続きます。

カロリーを消費するグルカゴンの分泌量を増やすため、週3時間は筋トレを中心とした運動を行うようにしましょう。筋トレを続けることでグルカゴンの分泌と筋肉の成長の両方を促し、2、3カ月後には脂肪が燃焼しやすい体内環境が実現します。今回はグルカゴンの分泌と筋肉の成長を考慮したエクササイズ3つを紹介します。それほど時間はかからないので、さらに10分以上のウォーキングなどをプラスしてみましょう。

今月のトレーニング

STEP 1
スラスター 60秒を3セット

スラスターは肩と足を同時に動かすエクササイズです。まずは、腰幅より若干広めに足を開きます。つま先も少し外に向けましょう。両腕を肩の前に構え、そのままスクワットを行います。スクワットから元の姿勢に戻る時に両腕を頭上に真っすぐ伸ばします。肩や膝に違和感や痛みのある場合はできる範囲で構いません。素手、ダンベルまたは水の入ったボトルの代用、いずれも可。ゆっくりしたペースで行いましょう。

STEP 2
開脚つま先タッチ
60秒を3セット

肩幅より広めに足を開きます。バランスに自信のない方は少し狭めでもOK。この状態から右手で左足をタッチして元の体勢に戻ります。次は左手で右足、というように左右交互に繰り返します。ハムストリング、腰などの柔軟性を要するため、難しい方はすねや膝にタッチするところから始めましょう。簡単に足をタッチできるという方は、ダンベルまたは水の入ったボトルを代用して負荷をかけてみましょう。

STEP 3
腕立て伏せ
60秒を3セット

上半身の定番エクササイズ。両手の位置は肩幅より広めに、両足はそろえるのがポイントです。膝は床についても大丈夫。上体を真っすぐに保ち、腕の力で床にできるだけ近付けてから、体幹の力も活用して元の体勢に押し上げます。壁、テーブル、椅子などを使い、床より高い位置に手をつくようにすると負荷を軽減できるので、肩や手首に違和感のある場合は試してみましょう。

※健康上の不安がある場合は、必ず医師に相談のうえ行うようにしてください。 写真クレジット:Kota Shimada

※同記事は、インディアナ州立大学でエクササイズ・サイエンス修士を取得し、フィットネスおよび栄養コーチングの指導を行う島田耕太さんが、資料や経験を元に執筆したものです。

Mastering Body Institute

9123 151st Ave. NE., Redmond, WA 98052 ☎571-235-8580 lifecultivation@gmail.com www.masteringbodyinstitute.com


参考資料

  1. R;, F. P. W. J. S. R. H. (n.d.). Insulin, glucagon, and somatostatin in normal physiology and diabetes mellitus. Diabetes. Retrieved July 14, 2022, from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/992227
  2. JO;, H. (n.d.). Exercise-induced increase in muscle insulin sensitivity. Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985). Retrieved July 14, 2022, from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16036907
  3. JO;, G. F. R. M. J. H. R. C. H. (n.d.). Effect of training on the response of plasma glucagon to exercise. Journal of applied physiology: respiratory, environmental and exercise physiology. Retrieved July 14, 2022, from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/893287
シアトル地域レドモンドを拠点とするプライベート・トレーナー。インディアナ州立大学でエクササイズ・サイエンス修士を取得し、1998年より個人、グループ、企業に向けてフィットネスおよび栄養コーチングの指導を行う。