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婦人科で知っておきたい10のこと〜あなたの不安と疑問が一気に解決!?〜

女性の命を守るヘルスケア Vol.21

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

第21回 婦人科で知っておきたい10のこと〜あなたの不安と疑問が一気に解決!?〜

Japanese SHAREの臨床アドバイザーで婦人科腫瘍専門医の鈴木幸雄です。今回は、女性からよく質問される健康問題や病気について一気にお答えします。個々の疑問に対して深堀りはせずに簡単な説明とし、重要なものについては別の機会に改めてフォーカスしていきます。これだけで「疑問が全て解消できた!」とは言えないと思いますが、少しでもきっかけになれば幸いです。

その① 生理痛は我慢で乗り切る?

痛みによって日常生活に支障があれば、改善を図るべきです。我慢してしまう人も多いのですが、痛みを改善する方法はたくさんあります。実は子宮や卵巣に病気が隠れている可能性も考えられるので、症状がひどい方は産婦人科に相談を!

その② 子宮筋腫は怖い病気?

女性の2、3人に1人は子宮筋腫があります。子宮は筋肉でできており、子宮筋腫は筋肉の良性腫瘍でコブのようなイメージです。できる場所や大きさによって、経血が増え月経がつらかったり、生理痛が強かったり、子どもができにくくなったりします。ちなみによく聞かれますが、基本的にがんにはなりません。

その③ 子宮は老化する?

子宮自体はほとんど老化しません。更年期に閉経するのは卵巣の機能が落ちる(老化)ためです。不妊治療などで50歳以上の方が妊娠するケースが見られますが、それは子宮自体がそれほど老化しないからです。

その④ 卵巣のう腫は手術が必要?

卵巣のう腫とは、卵巣にできる良性の腫瘍のことを指しますが、がんになる可能性を持つタイプもあるので要注意。本コラム第13回(2021年10月22日号)でも詳しく紹介した、チョコレートのう腫、粘液性のう腫、成熟奇形腫のいずれかの診断をされた場合、無症状でも大きさの変化を見ながら手術を検討します。4〜6センチを超えると、手術が大きな選択肢となるでしょう。チョコレートのう腫は手術以外の治療法(ホルモン剤など)もあり、定期的な受診が必要です。奇形腫は高齢の方以外、がんの心配はほとんどありません。

その⑤ チョコレートのう腫があると赤ちゃんができにくい?

チョコレートのう腫は、卵巣の中や卵巣の表面で月経が起こってしまう病気です。そのため、毎月の月経による炎症で子宮や卵管、大腸など周りの臓器に癒着をしてしまい、不妊になる可能性が高まります。診断された場合には定期的に受診し、適切な治療を受けましょう。

その⑥ 30代なのに更年期症状が?

更年期とは50歳前後の10年、45〜55歳くらいの時期を指します。30代で更年期のような自覚症状が見られる場合、ほかの原因が考えられます。症状がつらい方は一度受診を!

その⑦ がん検診って、いつ、何を受けるの?

女性特有のがんで検診の有効性が確立されているものは2つ、乳がん(マンモグラフィー)と子宮頸がん(細胞診、HPVテスト)のみです。子宮体がんや卵巣がんは、早期発見をするための有効な検査がありません。子宮体がんは、閉経後の不正出血で気付くことができれば、ほとんどが早期です。卵巣がんについては残念ながら決まった方法が見つかっていません。詳しくは本コラム第12回(2021年9月24日号)でも説明しています。

その⑧ 日本で子宮頸がんが増えているって本当?

日本での全体数はこの数十年変わっていませんが、40歳以下の患者が増えています。「子どもたちへのHPVワクチン」と「大人へのがん検診」の2本立てで予防に取り組むことが重要です。

その⑨ 人間ドックで腫瘍マーカーが高いと言われました……

腫瘍マーカーは、がんを直接意味するものではありません。名前から誤解が生じるのかもしれませんが、何十種類、それ以上の腫瘍マーカーが存在しますので、数値が高いと言われても怖がらずにきちんと説明を受けましょう。

その⑩ がん家系かもしれません

がんは2人に1人がかかる時代ですので、家族、親戚に多くて当然と言えます。「遺伝的ながん家系」はまた話が違い、特定の遺伝子に異常があることで、特定のがんになりやすい状態と考えられています。乳がんや卵巣がん、大腸がん、すい臓がん、前立腺がんなどは遺伝が関係している場合も。専門外来での問診や血液検査で家系やリスクについて知ることができます。

鈴木幸雄■医学博士。婦人科腫瘍専門医。Japanese SHARE臨床アドバイザーを務める。これまで多くの子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん患者における手術、化学療法を担当。がん予防に関する健康行動理論の構築をテーマに博士号取得。現在、コロンビア大学産婦人科・婦人科腫瘍部門の博士研究員。産婦人科専門医・指導医、女性ヘルスケア専門医、細胞診専門医、腹腔鏡技術認定医でもある。横浜市立大学産婦人科客員研究員。


SHARE 日本語プログラム

ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)
問い合わせ・患者サポートミーティング申し込み:​admin@sharejp.org
詳細:https://sharejp.org

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。

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