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アメリカの学校事情を踏まえて翻訳を!〜技あり!機械翻訳達人への道第17回

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第17回 アメリカの学校事情を踏まえて翻訳を!

【今回の例文】

Jump Start orients kindergartners and their families to their new school community. Children come to their new school, meet staff and peers, and practice kindergarten routines. Most elementary schools choose to offer Jump Start, which is a voluntary summer program. Check back in March to find out which schools will be participating in Jump Start 2022. While not all schools offer Jump Start, every elementary and K-8 school will welcome new kindergarten students with an open house or informal visit to the building to meet staff before school officially begins.

(出典:SPSホームページ)

【機械翻訳】

ジャンプ・スタートは、幼稚園児とその家族が新しい学校のコミュニティーになじめるようにするものです。子どもたちは新しい学校にやって来て、職員や仲間に会い、幼稚園の習慣を身に付けます。 ほとんどの小学校では、ジャンプ・スタートは任意の夏季プログラムとして実施されています。2022年のジャンプ・スタートに参加する学校は、3月に発表される予定です。全ての学校がジャンプ・スタートを実施するわけではありませんが、全ての小学校と幼稚園児向けの学校は、正式な学校が始まる前に、オープンハウスや非公式訪問で新しい幼稚園児を迎え、職員と会う機会を設けます。

(DeepL翻訳)

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【修正後】

「ジャンプ・スタート」は、キンダーガーテン新入生とその家族が学校生活を円滑にスタートできるように開催されるものです。子どもたちはひと足先に学校に通い始め、教員やクラスメートと顔を合わせ、学校の決まりごとや習慣を身に付けます。 ほとんどの小学校では、夏休み中の任意のプログラムとしてジャンプ・スタートが実施され、2022年の実施校は3月に発表予定です。中にはジャンプ・スタートを行わない小学校もありますが、8年生までの一貫校を含む全校で、登校初日を迎える前に、オープンハウスやカジュアルな学校訪問など何らかの形で新入生が教員と話す機会が設けられます


シアトルでは9月の入学シーズンに先立ち、多くの小学校で「ジャンプ・スタート」が実施されます。その紹介文を訳してみましょう。日本とアメリカでは教育制度が異なるので、その違いをよく理解して訳すことが重要。翻訳の鉄則、「読み手は誰か」を意識し、入念な下調べを心がけてください。

今回のポイント

1. ジャンプ・スタートって何?

Jump start は、一般的に車2台をケーブルでつないで、バッテリーが上がってしまった車のエンジンを起動させること。また、「活性化させる」、「勢い良くスタートする」などの意味もあります。今回の場合は、日本の「慣らし保育」に近いニュアンスで使われていますが、そのままカタカナにしました。

2. Kindergartenの訳は幼稚園で正しい?

小学校に組み込まれているアメリカのキンダーガーテンは、制度上、日本の幼稚園とは全く異なるものです。そのため、あえてキンダーガーテンとカタカナにしました。childrenを「幼稚園児」と訳すこともしません。

3. K-8はどう訳す?

Kはキンダーガーテン、8は8年生(中学 3年生)。つまり、キンダーから8年生までが通う一貫校のことを指します。K-5(小学5年生まで)、K-12(高校 3年生まで)など、教育関連の情報ではよく見る表現です。

まとめ

長い夏休みが終わり、ようやく新学期が始まりました。新入生も、在校生も(そして保護者も)気持ちを新たに、楽しい学校生活、そして実りある秋をお過ごしください。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。