シアトルの知恵ノート
知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。
今から学ぶタックス・リターンの基礎知識
米国版確定申告、タックス・リターンの季節が今年もやって来ました! 初めての方はまず基本を押さえておくことが肝心。わからないことがあれば専門家に相談してみましょう。
タックス・リターンとは
● 締め切り:2023年4月18日(火)
● 申告先:米国税務省(IRS)および州または市
● 対象:アメリカ国内で所得がある全ての人
日本で言う確定申告のことを、アメリカではタックス・リターンと呼びます。過払いの税金を払い戻す、 あるいは不足分を納税することで、追徴税や罰金を防ぐものです。市民権の有無や在住ステータスにかかわらず、アメリカ国内で所得がある人には申告義務が発生します。ただし、Fビザ(学生ビザ)、Jビザ(インターンビザ)など、一部のビザ保持者は除外されます。
自分でIRS指定の書類を用意して申請することも可能ですが、専門知識が必要なので、会計ソフトやオンライン代行サービスを利用するか、専門家である会計士・ 税理士に依頼するのが一般的です。締め切りを過ぎてしまうと罰金が科され、遅延分の利子が算出されて増税となるケースもあります。そうならないためにも、早めに会計士・税理士に相談しましょう。事例によりますが、最大3年分さかのぼって納税することもできます。
申請に必要なもの
● SSN
● Form W-9
米国で就労する人が持つ社会保障番号、SSN(Social Security Number)を取得していることが大前提。就労ビザ保持者の配偶者・扶養者などでSSNを持っていない状態で所得を得ている人は、IRSが管理する納税者識別番号(ITIN:Individual Taxpayer Identification Number)の申請が必要です。
年明けに勤務先の企業から送られてくるForm W-9という書類には、1年間の収入と源泉徴収が記されています。万一、紛失した場合は、発行元の企業に再発行してもらいましょう。フリーランスや業務委託の形態で就労する方は、Form 1099と呼ばれる書類が代わりに発行されるので、これを使用して申告します。
控除・クレジット
控除(Deduction)は諸経費を申告して収入から差し引き、かかる税金を抑える制度を指します。交通費や仕事に必要な機材の購入費から慈善事業団体への寄付まで、対象となる項目は幅広く、収入の10%以上であれば医療費も控除できます。
一方、クレジットは税金そのものを減額できる制度。高等教育の学費(最大2,000ドル)、米国外での収入にかかる所得税、燃料電池自動車の購入費などが主に挙げられます。上限額はあるものの、控除と併用して申請が可能です。
なお、失業保険(Unemployment Insurance Benefit)は所得扱いとなり、課税対象です。確定申告でしっかり手続きを行ってください。州から送られてくるForm 1099-Gに詳細が記載されています。
転職・転居の場合
複数の企業から収入を得ている方、昨年中に転職して職場が変わった方は、全ての企業からW-2(あるいはForm 1099)を発行してもらう必要があります。また、昨年中に別の市・州に転居した場合は、それぞれの市・州で申請しなければなりません。
日本に永久帰国した方も、昨年中にアメリカで所得があった場合は申請が必須。海外からでもオンラインでの申請が可能です。また、多くの会計士・税理士が、国外からの相談を受け付けています。
2022年度の変更点
今年度はクレジットの減少、所得控除の制限により納税額が増えることが予想されます。節税に、専門家のアドバイスがより求められることになるでしょう。
● クレジットの減少
2021年度では、パンデミックの影響を考慮され、納税者の助けになるクレジットが拡大。しかしながら、2022年度は2019年度以前のルールに戻ります。
チャイルド・タックス・クレジット
受給資格年齢が2021年度は17歳まで引き上げられましたが、2022年度からは16歳(2022年12月31日時点)までとなり、また受給額の上限も、2021年度の3,600ドルから従来通りの2,000ドルへ変更に。 ※SSN保持者対象
チャイルド・アンド・ディペンデント・ケア・クレジット
2021年度は最大8,000ドル受給可能でしたが、こちらも2,000ドルに引き下げられます。
● 寄付金の所得控除削減
タックス・リターンは基礎控除(Standard Deduction)または項目別控除(Itemized Deduction)のどちらかで申告でき、通常は控除額が高いほうを選択します。2021年度は、IRSより認可を受けた団体に寄付した際、基礎控除でも独身(Single)または夫婦個別申告(MFS)の場合で300ドル、夫婦合算申告(MFJ)の場合で600ドルの所得控除がありました。しかし2022年度は、項目別控除でのみ所得控除が可能に。多くの納税者が基礎控除を選択することから、かなりのマイナス点と言えるでしょう。
シアトル国際会計事務所
尾崎真由美■ワシントン州CPA。シアトルを中心にアメリカでの確定申告や会社設立を支援する。全ビザ、グリーンカード、アメリカ国籍に対応。日本帰国時の相談も受け付ける。過去のFBARなどクロスボーダータックスを得意とする。
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