Home アメリカ生活 シアトルの知恵ノート 時代を超えて語り継がれる、...

時代を超えて語り継がれる、 ステンドグラスの輝きをくらしに〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

時代を超えて語り継がれる、
ステンドグラスの輝きをくらしに

ステンドグラスと聞くと、何を思い浮かべますか? 教会の窓やティファニーランプを想像する人は多いでしょう。ガラスの色ひとつひとつが持つ深い意味や職人の繊細な技、長い歴史と多彩な技法は、一般的にあまり知られていません。奥深いステンドグラスの美しさを暮らしに取り入れ、毎日をさらに素敵に彩るヒントを紹介します。

ステンドグラス赤坂工房

スミス美季■小学生の頃から母政子さんが自宅工房でステンドグラスを制作する姿を見て育つ。病気を理由に政子さんが引退したのち、工房に残された多くのオリジナル作品をたくさんの人の身近に置いてほしいと、アクセサリーに作り替えるなどしてワシントン州内のマーケットに出店を始める。母が目指した「木造日本家屋に融合するステンドグラスの良さ」を伝えるべく試行錯誤を続けている。

Stained Glass Akasakakobo
info@stainedglassmasako.com
https://stainedglassmasako.com
@stainedglassakasakakobo

ステンドグラスの歴史
ステンドグラスの起源は明確ではないものの、キリスト教とともに誕生したと考えられ、西暦400年頃の板ガラスの登場にさかのぼるとされます。現存する世界最古のものは9世紀、ドイツのロルシュ修道院跡から出土したキリスト頭部とみられるガラス片です。中世ヨーロッパではキリスト教の普及とともに教会に多用され、特にゴシック建築で大きな窓に聖書の物語を描く作品が増えました。これは文字の読めない人々にも神の教えを伝える役割を担っていました。12世紀にはH型鉛ケイム(ガラス同士をつなぎ合わせる部材)を用いる技法が確立し、絵付けや素材も進化していきます。19世紀になるとアメリカのガラス工芸家ルイス・C・ティファニー氏がランプ型ステンドグラスを創出し、当時流行していたアール・ヌーボーの影響も受け、宗教画を中心としたモチーフから、植物をはじめとする多彩なデザインへと広がりました。
ASGLA 2001年掲載の政子さんの作品 「Rose」
ワシントン州では吹きガラス作家デイル・チフーリ氏が有名ですね。ティファニーランプの世界ではピアース郡のギグハーバーにあるキャロル・コンティ氏創設のアソシエーション・オブ・ザ・ステンドグラス・ランプ・アーティスト(ASGLA)が著名で、全盛期には、同協会が毎年作成するカレンダーに作品が選ばれることがランプ作家の登竜門とされていました。日本へは明治期以降に技法が伝わり、現在は日本家屋向けのデザインも多く制作されています。
ステンドグラスの技法
ステンドグラスには10種類以上の技法があります。今回はその中から代表的なもの三つを紹介します。
1.鉛ケイム技法
H型断面の鉛(ケイム)の溝にカットしたガラスをはめ込み、ハンダで接合するもの。中世ヨーロッパの教会窓から続く伝統技法で、大型パネルや直線・曲線の組み合わせでできています。
2.銅箔どうはく技法
ガラス片の縁に銅箔テープを巻き、ハンダで接合するもの。前述のティファニー氏が普及させたもので、細かいパーツや複雑な曲線を表現でき、ランプシェードや小物制作に適しています。
3.ガラスフュージング
ガラス片を電気炉で加熱して融合させるもの。鉛や銅箔を使わず一体化でき、食器、ジュエリー、現代アートに活用されています。これにはスランピング(型に落とし込む成形)も含みます。
ステンドグラスの醍醐味はデザインだけではない
ステンドグラスの魅力は、デザインだけでなく選ぶガラスによって同じパターンからでも全く異なる表情の作品が生まれることです。ガラスの種類は大きく分けて、主にヨーロッパで作られる「キャセドラルガラス」と、アメリカで作られる「オパレッセントガラス」の2種類があります。近年は中国製も登場し、それぞれに個性があります。ガラスの強度や光の通し方、1枚の板のどの部分を使うかによっても色や模様の印象は驚くほど変わります。そして、色そのものには象徴的な意味があります。
キリストの血、情熱、愛
聖母マリア、天国、希望
自然、成長、生命
高貴、威厳、神秘
黄金、知恵、啓示
純粋、潔白、神
中でもピンクやルビー色は製造が難しく高価なため、出会えたらそれは特別な機会。そんな希少な色を探してみるのも、ステンドグラスの楽しみ方の一つではないでしょうか。
日常にガラスのある生活を
ステンドグラスの技法には高度な経験を要するものも多く、立体的な作品を制作するには長年の修練が必要です。ティファニーランプの中には、かつてはアメリカ人の平均年収の半分ほどの価格がついたものもあり、身近に置くには少し贅沢だと考える人も少なくないでしょう。
一方で、サンキャッチャーのようにカット済みのガラスを使うものや、フュージングのように比較的難易度の低い技法もあります。最近ではそういった小さな作品を自分で制作できる教室も数多く開かれています。
特に冬の日照時間が短いワシントン州では、小さなガラス作品が光を通すことで暮らしに彩りを添え、心を明るくしてくれます。年月を経ても変わらぬ輝きを放つガラスの魅力。その奥深い輝きと色彩は、言葉だけでは伝えきれません。赤坂工房のウェブサイトでは多彩な作品写真をご覧いただけます。光と色が織りなす世界を、そっとのぞいてみませんか。