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子どもたちのために言語聴覚士ができるサポートとは〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

子どもたちのために言語聴覚士ができるサポートとは

小児言語聴覚士は、スピーチセラピーなどを通して、コミュニケーション能力に遅れがある子どものサポートをしています。では、どのようにコミュニケーション能力の遅れを判断したら良いでしょうか? また、多言語環境で暮らすバイリンガルの子どもの場合、違いは見られるのでしょうか?

ペレグリン・セラピー
ダニエル・ミラー(Daniel Miller, MA、MS、CCC-SLP)
インディアナ州のパデュー大学卒業。言語療法のクリニックでクリニカルディレクターを務めた後、2013 年から言語聴覚士として活動。発音/音韻、言語の流ちょうさ、社会的コミュニケーションのスキルの発達に遅れが見られる子どもたちを、長期間にわたりサポートする。口蓋裂の病歴に関連する鼻咽頭の誤学習や吃音の分野にも精通し、英語の読み書き、舌を突き出す嚥下パターンの向上を促すセラピーを提供している。
Peregrine Therapy
16770 NE. 79th St., #105, Redmond, WA 98052
☎425-689-8570、dannym@peregrinetherapy.com
www.peregrinetherapy.com

スピーチセラピーで
子どものコミュニケーション能力を改善

ひと口にコミュニケーション能力と言っても、分野は多岐にわたります。言語療法士はさまざまな種類のサポートを提供できますが、バイリンガルの子どもの家庭に必要とされるまでには時間がかかる場合があります。なぜなら親(言語療法士でさえも!)は、子どもの発達の遅延は単に2言語を学んでいることによるものと信じがちだからです。2言語を学習する子どもは、どんな状態であれば正常と言えるのでしょうか? 子どものコミュニケーション能力において遅れの出やすい分野と判断の目安を、バイリンガルの子どもの場合を含めて説明していきたいと思います。

●構音能力
構音というのは発音のことです。構音能力に遅れがある場合、子どもは正確に言葉を発音できません。たとえば、「さ・し・す・せ・そ」と言いたいときに「た・ち・ちゅ・て・と」になってしまう、といった具合。もちろん、誰でも小さいうちはそんな話し方をするものです。もし、5歳以上でそうした話し方をする子どもの場合は、専門家のサポートが必要かもしれません。

「だっこ」と言いたいときに「だっと」または「がっこ」と言ってしまうことは、2歳の子どもでしたらよくあります。2言語を学習している場合でも、構音能力は同じようなペースで発達します。英語も話す場合、「girl」の代わりに「dirl」と言うでしょう。しかし、3歳になってもそのような言い方になっているなら、言語聴覚士に相談してみましょう。

バイリンガルの子どもが、一方の言語に「アクセント」を持っていることはよくあります。 たとえば、日本語が強い子どもは、大人が話すのと同じように「R」と「L」を混同して英語を話すことも。 それでも、日本語が強い子どもの日本語は、バイリンガルではない子どもと同じペースで発達しているはずです。

●言語能力
子どもは言いたいこと、伝えたいことがあっても、的確な言葉を探して他人に伝えられない場合があります。まだ語彙が少ないために、うまくつなぎ合わせることができないのです。これ、それ、あれ、といった指示語をたくさん使ってしまいます。

一般的に、2歳までには50語を話せるようになり、3歳の頃には大人が数を把握できなくなるくらいたくさんの言葉を話します。2言語を学習していても、その速度が遅くなることはありません。2歳の誕生日を迎えたバイリンガルの子どもが英語で10語、日本語で40語を知っていれば、合わせると50語です。ほとんどの子どもはそれよりもはるかに多くの語彙を持ちます。英語で25語を知っていて、日本語でも同じ意味の25語を知っていることはあるでしょう。これも合わせて50語とカウントされます。しかし、単語を2、3個しか使用していない子どもがいたら、それは決して2言語を学習しているからではありません。

●流ちょうさ
子どもが吃音(Stuttering)の場合、言葉を発するとき、苦しそうに見えることがあります。たとえば、「車」と言いたいときに「く、く、く、く、くるま」となってしまいます。吃音が出ているとき、子どもが緊張しているというわけではないのです。子どもの代わりに大人がしゃべってあげたくなりますが、子どもが話し終わるのを辛抱強く待つことが大切です。

2言語を学習しても、流ちょうさのスキルには影響しません。 興味深いことに、吃音のあるバイリンガルの子どもは、一方の言語で吃音が多くなり、他方の言語では吃音が少ないケースが見られます。

●社会的コミュニケーション
人としゃべるときに、少し違った話し方をする子どもがいます。たとえば、自分の名前を呼ばれても反応しません。もしくは自分から言葉をあまり発することはないけれども、人の言葉をオウム返しにまねをすることがあります。子どもの社会的コミュニケーションの遅れは、ほとんどの場合、自閉症に関連しています。

バイリンガルであっても、それが子どもの社会的コミュニケーションの発達を遅らせる原因とはなりません。正常に発達している子どもは、誰かに話しかけられたら何らかの方法で返答します。たとえ知っている語彙が少なくても、言葉を使おうと努力するはずです。

心当たりのある方はぜひ当クリニックまでお問い合わせください。言葉の遅れが見られる場合、その子どもの最も強い言語での治療が最善です。当クリニックでは英語にも日本語にも対応し、子ども向けのスピーチセラピーを行っています。

言語聴覚士って、なんですか? What is a speech-language pathologist?