12月8日、米下院にて法案番号H.R.158が賛成407反対19の圧倒的多数にて可決されました。この法案の正式名は、「Visa Waiver Program Improvement and Terrorist Travel Prevention Act of 2015」と言います。11月のパリでの同時テロ攻撃を受けて、米国でもさらにセキュリティを強化する目的により審議された法案の一つです。ビザ免除(ウェイバー)プログラムとは、特定の国の市民を対象に、90日間までの米国訪問時のビザ査証取得を免除するプログラムで、現在38カ国が対象となっており日本もその中に入っています。同プログラムは、米国を観光で訪れる日本人が通常利用する入国方法で、ESTA(Electronic System for Travel Authorization) の事前登録が必要なため、日本では「エスタ」と呼ばれることもあります。
この法案が実際に法律になるためには、上院での審議・採決を経て、大統領が拒否権を使わずに署名する必要がありますが、ビザ免除プログラムは、一番身近な米国訪問の方法なので、今回下院が採決した法案の内容をご紹介したいと思います。
この法案では、ビザ免除プログラムにて入国申請する場合は、機械読み取り式パスポートである必要があり、2016年4月1日以降は、 電子パスポートであることを要求しています。日本のパスポートは、2006年3月20日以降は、 ICパスポートと呼ばれる電子チップを搭載したタイプが発行されており、今回の法案によっては、大きな影響はないものと考えられます。実は、 ビザ免除プログラムにおいては、2006年10月26日以降発行のパスポートに対しては、すでに電子パスポートであることを義務付けており、それ以前に発行されたパスポートに対してのみ例外規定があったのですが、今回の法案は2016年4月1日以降は、例外なく電子パスポートであることを要求するということです。
また、この法案では、ビザ免除プログラムにて入国申請する人は、2011年3月1日以降、イラク、シリア、および1979年輸出管理法で指定するテロ支援国家(現在イラン、スーダン、シリアが指定されています)、そしてこの法律の施行後60日以内に国土保安省長官によって指定される国・地域に滞在したことがないという条件と、これらの国の国籍を持っていないという条件が新たに加わります。過去5年間にこれらの国・地域に滞在したことがある人、 またはビザ免除プログラム対象国とこれらの国の2重国籍者は、米国訪問にはビザ査証を要求するということです。ただしこれには例外があり、軍関係もしくは政府関係の職務上の関係で、これらの国・地域に滞在した人は、 引き続きビザ免除プログラムにて入国申請することが可能です。
国土保安省長官がこれらの国・地域を指定する場合、国務省および国家情報会議の助言を受けて指定を決定するのですが、対象がイラク、シリア、イラン、スーダン以外の国に及ぶ可能性があります。この条件は、一般的には日本人に影響は与えないと考えられますが、NPO活動などでこれらの国・地域に滞在したことのある人には大きく影響してくるでしょう。
その他、この法案は、ビザ免除プログラム対象国政府に対して、例えばパスポート紛失情報の24 時間以内の情報提供など、様々な情報共有や相互の監視強化を要請する内容となっています。
[知っておきたい移民法]