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離婚で移民上のステータスはどう変わる?〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

離婚で移民上のステータスはどう変わる?

外国人がアメリカで離婚する場合、住んでいる州の法律を始め、アメリカと日本の法律の違いや、財産分与、親権など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。それに加え、外国人の配偶者の場合は、離婚による移民法上のステータスへの影響も知っておく必要があります。今回のコラムでは、外国人配偶者が遭遇する可能性が高い、さまざまな状況について解説します。

非移民ビザ保持者が離婚する場合

H-1Bビザ保持者としてアメリカの会社で働いているAさんと、その配偶者でH-4ビザ保持者のBさんが離婚すると想定した場合、H-1Bビザ保持者のAさんのステータスに影響はありません。しかし、Aさんの配偶者としてH-4ビザを取得したBさんは、離婚が成立すると法律上の配偶者ではなくなるため、配偶者用のビザであるH-4ビザを維持できなくなります。つまり、本国に帰国するか、あるいは、離婚後もアメリカに滞在したい場合は単独でほかのビザを取得しなければなりません。

また、AさんとBさんの子どものCさんが扶養家族としてH-4ビザを保持している場合、両親の離婚は、Cさんのステータスに影響しません。CさんのH-4ビザは、Aさんとの親子関係に基づき発行されたビザなので、両親が離婚後もAさんがH-1Bビザを保持している限り、CさんはH-4ビザを保持できます。ただし、CさんがAさんの継子である場合は、離婚と共にCさんはH-4ビザを維持できなくなってしまいます。

結婚によるグリーンカード申請中に離婚する場合

米国市民あるいはグリーンカード保持者との結婚に基づきグリーンカードを申請している外国人が申請中に離婚することになった場合、グリーンカードの申請を続けることはできません。ただし、離婚の理由が米国市民またはグリーンカード保持者である配偶者による虐待である場合、個々の状況によっては自己申請が可能なケースがあります。

雇用によるグリーンカード申請中に離婚する場合

H-1Bビザ保持者としてアメリカの会社で働いているAさんと、その配偶者でH-4ビザ保持者のBさんが、Aさんの雇用によるグリーンカード申請中に離婚すると想定した場合、Aさんは、申請の直接的な受益者として申請を続けることができます。しかし、Bさんは、Aさんとの婚姻関係に基づく間接的な受益者として申請をしているので、Aさんとの離婚が成立したら申請を続けることはできません。

グリーンカード保持者が離婚する場合

10年間有効なグリーンカードを持つ場合、離婚しても、結婚が偽装ではないこと、またグリーンカード申請に不正がなかったことを前提として、グリーンカードを失うことは原則ありません。結婚の正当性に関しては、帰化申請時に調査の対象となる可能性があります。なお、結婚を通してグリーンカードを取得した人が帰化申請を行う場合、婚姻関係が続いていることを条件に、グリーンカード取得後3年で帰化申請を行うことができますが、離婚した場合は、グリーンカード取得から5年を経過しないと帰化申請を行うことはできません。

米国市民、あるいはグリーンカード保持者との結婚をベースにグリーンカードを取得した外国人配偶者には、2年間の条件付きのグリーンカードが最初に与えられます。この条件を取り除くには、条件付きのグリーンカードが失効する90日以前に条件削除の申請(Joint Petition)を夫婦そろって行います。しかし、グリーンカード取得後、2年以内に離婚した場合は、この条件削除の申請を夫婦で行うことができません。

このような場合は、その結婚が虚偽ではなく正当であったと証明することができれば免除申請(Waiver)が可能なケースもあります。証明方法は個々の結婚状態によって異なるため、特に絶対必要な書類は存在しませんが、結婚前の交際期間や結婚していた期間、ふたりを知る友人からの供述書、共同名義の財産・資産などが主な例として挙げられます。また、子どもがいるかどうか、同居していたかどうか、離婚の理由や和解する努力をしたかどうか、カウンセリングを受けたかどうかなど、本物の夫婦であることを証明し、同時にグリーンカードを得るためだけの偽装結婚ではなかったと証明することも重要です。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118