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企業研修ビザの選択

研修用のビザとしては、J-1ビザが最も一般的でしょう。J-1ビザには、いくつかの種類がありますが、その中でも、「トレイニー」と「インターンシップ」は一般的なビジネス用研修に用いられる種類です。「トレイニー」は、米国外での高校以降の学位がある場合は1年以上の勤務経験、学位がない場合は5年以上の勤務経験があれば参加できます。「インターンシップ」は、米国外での高校以降の学校に在学中もしくは卒業後1年以内の場合に参加できます。企業がその従業員を米国で研修させたい場合は、新入社員の場合は「インターンシップ」、すでに経験のある社員の場合は「トレイニー」として参加させることが可能です。

J-1ビザ以外には、H-3というビザが研修用として存在します。その条件としては、参加する研修プログラムが本国にはないこと、研修プログラムを通して得た知識や技術が本国でのキャリアに役立つこと、また研修プログラムを通して行う業務は、一般的な雇用・就労ではないこと等を満たす必要があります。J-1ビザとは条件が異なりますが、H-3ビザも企業が従業員を米国で研修させたい場合に利用可能です。

企業が研修用として利用できるビザとしては、B-1ビザも考えられます。B-1とは、短期ビジネス用ビザで、一般的にはオーダー発注、商談、ミーティング、コンベンション・カンファレンス出席・出展、マーケットリサーチ等の目的で3カ月以上の長期滞在が必要な場合に利用可能です。ビジネス用とはいっても、B-1ビザで通常の就労はできません。また、3カ月以下の滞在であれば、ビザ・ウェイバー(ビザを必要としない)が利用できるため、3カ月以上の滞在が必要であることを証明しなければなりません。

B-1ビザでの研修が許される内容は、ビジネス活動を純粋に観察する目的のみに限られる「クラークシップ(clerkship)」と呼ばれるものと、H-3と同様の条件のものがあります。つまりH-3の代替として、B-1が利用できる可能性があるということです。

H-3と同様の条件での研修プログラムの場合でも、B-1では、米国企業からの給与受け取りができません。ただし、研修に関連する費用の米国企業の精算・手当ての支払いに関しては、例外的に許可されます。また、米国企業に関しては、例えば米国関連会社である日本法人からの支払いは、米国企業には含まれないという解釈がなされています。また、B-1ビザで米国に滞在できる期間は、延長は可能ですが基本的に6カ月です。しかし研修期間が一年にわたる予定のものであっても、研修期間の長さのみをもって却下の理由にはできないとされています。社員を研修によってレベルアップすることは、企業にとっては常に課題です。米国でのビジネス研修は、日本での研修では得られない収穫もあるため、研修のニーズ・目的によってビザの種類を選ぶことが正しい選択につながります。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118