昨年10月にご紹介した「国際企業家ルール」という新しい米国滞在方法に関するルールは、今年7月17日に施行される予定でしたが、トランプ政権によって突然延期が決定され、さらには廃止される可能性まで出てきました。このルールは、オバマ大統領の2014年11月の移民法改革指針に沿って、国土安全保障省が新たな規則制定という形で実現しようとした滞在方法で、「ビザ」ではなく「一時的入国許可」です。そのため、議会で可決された法案に基づくものではなく、国土安全保障省による新しい規則制定によって実現されようとしていたところです。オバマ政権が新しい滞在方法を省による規則制定で行おうとしていた背景には、議会による法律成立よりも実現しやすいという理由がありました。
国際企業家として認定されるためには、過去3年以内に米国内で設立された会社の少なくとも15%の所有権を持ち、この会社の成長と成功に相当な貢献ができる知識・技術・経験を保持していることが必要です。
国際企業家が所有権を持つスタートアップ企業は、過去3年以内に米国内で設立された会社であること、設立以来ビジネスを運営していること、急速な成長と雇用創造への相当な潜在力があること、および過去1年以内に一定条件を満たす米国の投資家から34万5千ドル以上の投資を受けたか、10万ドル以上の政府関係の補助金・助成金を受けた実績が必要です。また、会社は投資の手段ではなくビジネスを運営するために存在する必要があり、国際企業家やその家族のみが生活できる小規模のビジネスであってはなりません。
トランプ大統領が発行した大統領命令第13767号(国境保全と移民法執行)によると、一時的入国を許可する場合は、国土安全保障省は法律に基づいて人道主義と公共の利益の観点から、申請を個々に審査するよう裁量を働かせることを要求しています。この大統領命令の趣旨を考慮したところ、国土安全保障省はさらにルールの適正性を吟味するために「国際企業家ルール」の施行を2018年3月14日まで延期することを発表しました。さらには、「国際企業家ルール」の撤回に関しての意見公募を行う意向であることも発表しました。今回のルール延期は、ルールの撤回に関しての周知と意見公募に対しての十分な時間を与えるためという趣旨です。
「国際企業家ルール」の施行の延期、さらにはおそらく廃止されるであろうことの原因は、トランプ大統領が発行した大統領命令第13767号に基づくことは明らかですが、元をたどれば、オバマ政権が一連の移民法改革を議会が通す法律という形ではなく、省による規則制定という形で行おうとしたこともあるでしょう。法律であれば、それを変更するには議会の議決を経て、法律成立の過程を踏む必要があり、国土安全保障省のみの判断によって、変更されることはないからです。
[知っておきたい移民法]