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移民を規制する大統領令その2

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

*同記事は、ワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得し、カンザス州及びワシントン州において弁護士資格を持ち、K&I Lawyersを琴河利恵弁護士と共に創業した五十畑諭弁護士が、在シアトル日本人の読者に向けて解説しているものです。詳細については、K&I Lawyersなど移民法の専門家へお問い合わせください。また、米国移民局ホームページ(英語)はこちらです。

移民を規制する大統領令その2

以前の記事で、4月22日にトランプ大統領が署名した大統領令についてお伝えしました。それは、主に移民のアメリカへの入国を60日間停止するという内容で、H-1BビザやLビザといった非移民ビザ労働者は対象にはなりませんでした。

しかし、労働省長官および国土安全保障省長官は、国務省長官と共に施行から30日以内に非移民ビザのプログラムを見直し、協議のうえ、アメリカの経済、アメリカ市民の雇用を優先するために必要な処置を大統領にアドバイスすることが記載されていたので、何らかの措置が取られる可能性があることは想定されていました。そして、6月22日にトランプ大統領は、アメリカの経済回復を目的とした「新型コロナウイルス流行後のアメリカの労働市場にリスクを与える外国人の入国停止宣言」と題する新たな大統領令に署名しました。今回の記事では、その主な内容についてお話しします。

この大統領令は、すでに6月24日から施行されており、2020年12月31日に失効することになっていますが、必要に応じて延長できることが記載されています。この大統領令よって、4月22日の大統領令が延長され、新たに以下の外国人によるアメリカへの入国が制限されることになりました。

アメリカへの入国が制限される対象者

1.H-1B専門職者ビザ
2.H-2B非農業季節・短期労働者ビザ
3.L国際企業内転勤者ビザ
4.J交流訪問者ビザ(インターン、研修生、教員、キャンプ・カウンセラー、オペア・プログラム、サマーワーク&トラベル・プログラム参加者)

上記に帯同する外国人も含まれるため、たとえば、H-1Bビザ保持者の配偶者や21歳未満の子どもは通常であればH-4ビザを取得できますが、同様にアメリカへの入国が制限されます。なお、大統領令の対象となるのは、大統領令が施行された6月24日時点で以下に該当する外国人です。

大統領令の対象

1.アメリカ国外に滞在していた
2..有効な非移民ビザを取得していなかった、そして
3.ビザ以外で、アメリカへ入国するために必要な入国許可書類(Transportation Letter、Advance Paroleなど)を取得していなかった

従って、この大統領令は、6月24日にアメリカ国内に滞在していた外国人には該当しません。また、この大統領令によって、現在有効なビザが取り消されることもありません。2の「有効な非移民ビザ」の解釈に関しては、6月24日の発表によると、その時点でカテゴリに限らず非移民ビザを取得していれば、大統領令の対象にはならないと読み取れますが、その後、6月24日時点で取得していたビザを使って入国する場合のみ、大統領令の対象にならないと改正されました。

たとえば、6月24日にアメリカ国外に滞在していたH-1Bビザ保持者は、有効なH-1Bビザを使ってアメリカに再入国できますが、6月24日にアメリカ国外に滞在していたF-1ビザ保持者が、H-1B申請認可の後、領事館のビザ・サービス再開時にH-1Bビザを申請し、H-1Bビザ保持者として入国できるようになるのは、大統領令失効後となります。

また、今回発表された大統領令は以下の人には該当しません。

大統領令が該当しない外国人

1.グリーンカード保持者
2.米国市民の配偶者または子ども
3.アメリカの食料サプライ・チェーンに重要な一時的労働またはサービスを提供する目的で入国を求める外国人労働者
4.国務省長官、または国土安全保障省長官により、入国がアメリカの国益に必要だと認められた外国人

在日米国大使館・領事館では、引き続き、外交・公用ビザを除く面接が必要なビザ申請の面接を一時的に停止しています。現段階で面接再開のめどは立っておらず、具体的な期間は発表されていません。ただし、13歳以下の子どもや80歳以上の高齢者の非移民ビザ、または非移民ビザの更新など面接の必要ないビザ申請は引き続き受理されています。面接が必要なケースであっても、アメリカに緊急で渡航する必要がある場合は、面接予約をリクエストし、領事がケースバイケースで緊急性を判断して認められた場合のみ面接を行っています。たとえば、延期不可能な重要なビジネス、親近者の病気や訃報、医療関係者、人道的な理由、年齢によるビザの発給期限が迫っている子どもがいるなどが、緊急面接に該当するケースとなります。

移民法に関する状況は頻繁に変わっていますので、最新情報を確認してください。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118