知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
プレミアム・プロセス・サービス拡大
移民局は、6月1日よりプレミアム・プロセスのサービスを拡大することを発表しました。
プレミアム・プロセス・サービスとは、優先審査のことです。移民局は、非移民ビザ労働者申請(Form I-129 Petition for Nonimmigrant Worker)、および雇用ベース移民ビザ申請(Form I-140 Immigrant Petition for Alien Worker)を対象に、優先的に審査するサービスを提供しています。プレミアム・プロセスが可能な申請は、移民局の公式サイト(www.uscis.gov/forms/all-forms/how-do-i-request-premium-processing)で確認できます。プレミアム・プロセスを使うことによって、移民局は受理から15暦日以内に、大半の申請に対して認可通知、追加書類要求通知、却下通知を、また、不正行為の疑いがある申請に対して調査通知を発行すると保証しています。
拡大の対象となるのは、すでに受理されている一部のEB-1ビザにおける多国籍企業のエグゼクティブまたはマネジャー(Multinational Executive or Manager)と、EB-2ビザにおける国益免除(National Interest Waiver)の申請で、以下の通り段階的に行われる予定です。
2021年1月1日またはそれ以前に受領されたEB-1ビザの多国籍企業のエグゼクティブまたはマネジャーの申請は、2022年6月1日よりプレミアム・プロセスにアップグレードすることができます。
2021年6月1日またはそれ以前に受領されたEB-2ビザの国益免除の申請、および2021年3月1日またはそれ以前に受領されたEB-1ビザの多国籍企業のエグゼクティブまたはマネジャーの申請は、2022年7月1日よりプレミアム・プロセスにアップグレードすることができます。
なお、今回プレミアム・プロセスにアップグレードできるようになったEB-1ビザの多国籍企業のエグゼクティブまたはマネジャーと、EB-2ビザの国益免除申請の分野で、移民局が保証している通常の処理時間は45暦日以内となっています。
このアップグレードのリクエストに必要な申請書(Form I-907 Request for Premium Processing Service)ですが、プレミアム・プロセスの開始日より前に提出されたものは拒否されます。現時点では、新しい雇用ベース移民ビザ申請と同時には受領されません。また、前述の申請処理時間の対象となるのは、適切に受領された申請であることが前提です。たとえば、間違ったサービス・センターに申請を送付したり、署名をし忘れたり、記入漏れがあったり、支払い額が足りていない場合は、プレミアム・プロセスの対象にはなりません。
審査の過程で、移民局が、追加書類要求通知(request for evidence)や申請を拒否する意向であることの通知(notice of intent to deny)を発行し、それに対して回答が必要な場合、保証されている審査期間は一度停止され、移民局に回答を提出した時点から新しい審査期間が開始します。万一、保証期間内に申請が処理されなかった場合は、プレミアム・プロセス料金を返金したうえで、引き続き優先審査で対応することを保証しています。
今回の発表に伴い、移民局は、プレミアム・プロセスの申請書をアップデートしました。新しい申請には「05/31/22」と記載があります。移民局は6月中、引き続きアップデート前の「09/30/20」バージョンも受け付けますが、7月1日からは「05/31/22」バージョンのみとなります。
プレミアム・プロセスの料金は、申請するビザの種類によって異なります。
プレミアム・プロセスの料金
$2,500
E-1、E-2、E-3、H-1B、H-3、L、O、P、Q、TN (I-129)
EB-1、EB-2、EB-3(I-140)
$1,500
H-2B、R(I-129)
上記がそれぞれの申請料に加算されます。また、プレミアム・プロセスの料金は、通常の申請料とは別に個別の支払いになります。その他の申請料とまとめて支払った場合、申請は受け付けられませんので注意してください。
移民局は、「プレミアム・プロセスのサービスを拡大することにより、通常の申請の審査期間が長くなってはならない」という議会の要件を厳守しつつ、今後その他の分野における申請でもプレミアム・プロセスが利用できるように検討しています。