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バイデン政権下、コロナ禍による変更点〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

バイデン政権下、コロナ禍による変更点

●移民ビザ申請者の入国制限解除

昨年から当コラムでも何度かお伝えしている、今年3月末まで有効とされたトランプ前政権による外国人に対する入国制限(大統領布告令10014号)は、2月24日に撤回が発表され、それと同時に入国制限が解除されました。今回入国制限の解除の対象となるのは、雇用関係に基づく移民ビザ、家族関係に基づく移民ビザ、抽選永住権当選者による移民ビザなど、移民ビザ申請者のみで、昨年からストップしていた申請が撤回により動き始めることになります。

たとえば、グリーンカード保持者の配偶者で、大使館でインタビュー待ち状態だった方は、順にインタビューがスケジュールされ、移民ビザ発行後、アメリカに入国することができます。ただし、大使館は、新型コロナウイルス対策により、1度に入館できる人数を制限したり、1日にできるインタビューの数を減らしたりと、通常とは違う体制で業務を行っています。そのため、入国制限が解除されても、この後の申請が迅速に処理されるとは限りません。

また、今回の入国制限の解除とは別に、一部の例外を除き、渡米前14日以内に、ブラジル、中国、イラン、欧州シェンゲン協定の地域、英国、またはアイルランドに滞在した外国人は、入国できません。これは、公衆衛生上の理由による制限のため、引き続き有効です。そして、CDC(米疫病対策センター)は、現在アメリカに入国を希望する渡航者全員に対し、出発の3日以内に受けたCOVID-19検査の陰性証明の提示を義務付けていますが、これも引き続き有効です。

今回の解除は、H-1BやH-2B、L-1といった非移民ビザのカテゴリ(大統領布告令10052号)には該当しません。よって、ビザ申請に同行する配偶者や子どもを含め、これらの非移民ビザ申請者の入国制限は3月31日まで有効です。3月31日以降も規制が延長されるか、あるいは失効するかの発表はまだありません。なお、Eビザはもともと入国制限の対象にはなっていません。

●非移民ビザの就労ビザ、H-1B申請

現在、H-1Bビザのスポンサー企業は、電子登録システムに申請を希望する外国人労働者を事前登録し、当選した場合にのみ申請を提出できることになっています。

2022会計年度にH-1Bビザをスポンサーする予定の企業は、3月2日からアカウントを作成することができ、実際の登録は、3月9日の東部時間正午から3月25日の東部時間正午までの間に行うことになっていましたので、3月25日の東部時間正午以降の登録は受け付けられません。

また、スポンサー企業は、複数の外国人労働者を登録することは可能ですが、1人につき登録は1回に限られており、もし外国人労働者1人に対して複数の登録を行っていた場合は、その外国人労働者の全ての登録がキャンセルされます。受益者1人につき10ドルの登録料は、抽選に外れた場合でも返金されません。

なお、今年1月に発表のあった平均賃金レベルの高い方から優先順位を付けて抽選を行う法案は、12月31日まで施行が延期されることが発表されました。そのため、2022会計年度は、従来通り、無作為に抽選が行われます。その抽選の順番ですが、まず、高学歴の申請者(米国で修士号、またはそれ以上の学位を取得している人)を含む全員の申請者に対して無作為に抽選を行い、その後、この抽選に外れた高学歴の申請者を対象に、高学歴枠の抽選を無作為に行います。

移民局が1会計年度に発給できる一般枠のH-1B ビザの数は6万5,000件、高学歴枠は2万件です。移民局は、3月25日から3月31日の間に抽選を行い、当選結果は3月31日までに通知されます。その後、当選者は、4月1日から6月30日までの間にH-1B申請を移民局に提出し、審査結果を待ちます。6月30日以降の申請は受け付けられません。

3月9日から3月25日までの登録に当選した場合、就労開始日は2022年10月1日となります。10月1日が就労開始日となっていない申請は、受け付けが拒否されるか、審査で却下されます。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118