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H-2B 新ルールが発表後即日施行

H-2Bビザとは、非農業季節労働者のためのビザであり、1回限り・季節・収穫期または断続的な労働を行う目的で取得できるビザです。今年3月4日にフロリダ北地区連邦裁判所が出した差し止め命令により、労働省・移民局でのH-2Bビザ審査が再度停止する事態となったことはすでにお伝えしました。この判決によって、労働省では即日H-2B労働認定証が審査停止となり、移民局でも同日からH-2Bビザの審査が停止されました。その後3月16日に、労働省と移民局共同での新しい法規・法令の策定・公布を4月30日までに行うとの発表がなされました。

それを受け3月17日には移民局がH-2B通常審査を再開し、3月18日には一時的な救済策として労働省が裁判所に4月15日までの差し止め命令の保留(施行を続けること)を求め、裁判所がそれを許可しました。そしてその日より労働省ではH-2Bの審査が再開され、差し止め命令の保留期限の最後日である4月15日に、裁判所は再度5月15日までの保留を決定しました。また移民局でのプレミアム・プロセス審査も4月20日に再開されました。その後、移民局を所管する国土安全保障省と労働省の共同で4月29日に新しいH-2B法規が発表され、同日に施行されています。それとともに5月15日を待たずに旧ルールの施行は停止されました。

この新しいH-2Bの2015年ルールですが、一言で言えば2012年に労働省が施行を試みたが訴訟により施行できなかったルールとほぼ同じ内容となっており、今までのルールからのマイナーチェンジではなく、全くのモデルチェンジと言えます。この新ルールは、今までの認証・事後監査モデルから登録型認証・事後監査モデルへの変更、更なるアメリカ人労働者雇用のためのリクルートメント拡大、アメリカ人労働者へのベネフィットの拡大、各種通知・通告義務の強化、ドキュメント保持義務の強化、そして法令違反時のペナルティの強化、という特徴があります。

これらの特徴の一例として、リクルートメント拡大の面では、雇用開始予定日の75〜90日前にリクルートメントをスタートさせ、リクルートメントは雇用開始予定日の21日前まで続けられる必要があります。また労働組合がある場合は、労働組合にもリクルートメントの通知をする必要があります。なお過渡期のための措置として10月1日以前が雇用開始予定の申請の場合、このタイムフレームの規制が免除される可能性があります。

また事後監査強化の面では、労働省から労働者の給与記録の提示要求があった場合、72時間以内に提出しなければならないという規定があります。

アメリカ人労働者へのベネフィットの拡大の面では、12週間もしくは6週間ごとの最低4分の3の労働時間の保障、今までは週30時間でよかったのが週35時間以上を必要とし、契約満了時の往復旅費および日々の経費の支払い保証が要求されています。

各種通知・通告義務の強化では、職場に労働省指定の労働者の権利を書き出したポスター掲示を義務付けるなどがあります。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118