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オバマ大統領の移民法制度改革

オバマ大統領は11 月20 日、国民に向けて演説を行いExecutive Order(大統領命令)を発令しました。通常、法案を成立させるためには、上下両院で法案を通す必要がありますが、大統領命令は、大統領が議会の承認を要せずに発することのできる法令のことで、法律と同じ効果を持っています。
オバマ大統領は、移民法の改正法案が下院による採決見送りによって廃案になったことを受けて、大統領命令を使い、米国移民法制度の大幅な改革に取り組む意向を示しました。大統領命令には、主に不法者の進入を防ぐための国境警備の強化、高度な技術を持つ労働者や企業家による移民の迅速化、特定の条件を満たすことができる不法滞在者に対する強制退去の免除と就労許可などが含まれています。
20 日に行われた大統領演説では、特に不法滞在者への対策に焦点が置かれました。オバマ大統領は、全ての不法滞在者を強制退去させることは現実的ではなく、また、多くの不法滞在者は、家族を養うために低賃金の職に就き、長い間アメリカに住んでおり、その中にはアメリカで生まれたアメリカの市民権を持つ子どもがいる者も多いことから、彼らを強制退去させることで家族が離散することに懸念を示した上で、以下の条件を満たすことができる不法滞在者に対して、3年間の強制退去の免除と就労許可を認める救済策を発表しました。

• アメリカに5 年以上滞在していること
• アメリカ国籍あるいはグリーンカードを保持する子どもがいること
• 犯罪歴調査を通過すること
• 税金を支払うことに同意すること

約400 万人の不法滞在者がこの救済策に該当する見通しです。
共和党は、これはAmnesty(恩赦)だと猛反対していますが、オバマ大統領は、この救済策は最近アメリカに不法入国した者、または将来不法入国する者には適応しない、また、これはあくまでも一時的な救済策であり、不法滞在者に米国市民権を与えたり、永久的にアメリカに滞在することを許可するものでも、アメリカ人と同様の社会保障などを給付するものでもないため、恩赦とは異なると主張しています。
また、今回の大統領命令によって、2012年に発表されたDACA(Deferred Action forChildhood Arrival)の申請条件も拡大されます。DACA は、国外退去の対象になり得る若者(16 歳未満で入国し、2012 年6 月15 日に31歳未満であった)に対し、一定の条件を満たすことができれば、一時的に国外退去の免除、また就労許可を与える救済策で、2012 年6 月15日から申請が開始されました。今回の大統領命令によって、年齢の上限が廃止された他、これまで条件となっていた「2007 年6 月15日以前にアメリカに入国し、それ以降継続的にアメリカに住んでいる」ことが、「2010 年1月1 日以前に入国し、それ以降継続的にアメリカに住んでいる」という条件に変わりました。該当者には3 年間の就労許可が与えられます。これにより、約27 万人の不法滞在者が救済される見通しです。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118