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シアトルは将来の課題解決のカギやヒントが詰まっている

元シアトル留学生にインタビュー
シアトルは将来の課題解決のカギやヒントが詰まっている

大学時代にシアトル留学し、今は新聞記者として日本で働く渡邉 朔さんは、ソイソースを発行する北米報知社の元記者インターン。留学で得た経験が人生に大きな影響をもたらし、将来設計が明確になったと言います。当時の就職活動について詳しく話を聞きました。

取材・文:菅原瑞穂

北米報知社でのインターンシップで戦時中の日系アメリカ人強制収容について取材中の渡邉さん
渡邉 朔 ■大学2年生の夏、2012年9月から2013年7月までの約1年間、ワシントン大学に交換留学。2012年12月から2013年6月まで、北米報知社で記者インターンシップに参加。現在は朝日新聞記者として活躍。

就活を始めた時期を教えてください。

大学3年の夏ごろからですかね。大学2年次に大学の交換留学制度を使って留学していたので、帰国後、大学3年の夏から秋にかけて新聞社3社、テレビ局2社、通信社1社のインターンに参加し、積極的に業界理解に努めました。毎週のように合同説明会やOB・OG訪問にも積極的に参加していました。

帰国前からオンラインでもできる就活や情報収集を始めるべきだと思います。日本の企業に就職を希望する場合、留学中で日本から離れていてもネットを使ってインターンシップの参加申し込みをしたり、オンラインの企業セミナーを受けたりすることはできるので、帰国前に早めに情報収集をすることが大切です。

メディア業界に絞っていた理由は?

シアトルで経験した新聞社でのインターンシップが決め手でした。留学中に感じた日本の悪い部分をメディアで可視化することで、日本の若者に危機感や現実を受け止めて欲しい、日本の課題解決に貢献したいという思いから、メディアを志望するようになりました。

留学は日本を客観的に見つめ直す良い機会になり、日本を改めて捉え直すことができました。日本は、男尊女卑や少子高齢化、海外の方への差別など、他国に比べてまだまだ遅れている部分があるように感じます。創刊100年を超える『北米報知』での記者インターンシップを経験したことで、日系アメリカ人コミュニティーの方々と深く交流する機会に恵まれました。その半年間に、戦時中の強制収容や人種差別など、さまざまな苦難を乗り越えてきた人々が紡いできた生き方や思い、価値観に触れた経験が、かえって自分の生まれ育った日本が抱える課題に向き合うきっかけを与えてくれたと思っています。

留学経験は就活にどのように生かされましたか?

自分の過去の経験と、未来にある将来の目標をつなげる役割を果たしてくれました。振り返ってみると、留学先を決める時にシアトルを選んだのは「未来を作るアイデアを持っている、いろいろな人の話が聞けそうだから」でした。環境に配慮したまちづくり、多文化共生の橋渡し、デジタルのリーディング・カンパニー、ワクワクして聞きたい話がたくさんありそうなシアトルに魅了されました。その頃から、さまざまな人の話を聞くという記者の仕事につながるものがあったと思います。

就活とは、自分の過去、現在、未来を一直線につなげる作業です。今、自分がなぜ留学しているのか、今までなぜその選択をしてきたのか、興味を持っていたのか、これまでの自分を振り返って未来を見据えることが大切です。また、留学中に自ら足を動かし肌で感じて得た経験が、今まで抽象的であった自分のやりたいことや目標を具体化してくれました。インターン中に生の人の話を聞いたこと、ホームステイ先での家庭内のコミュニケーションや初めて触れるキリスト教の文化など、身近にある貴重な経験が自分のビジョンをはっきりさせてくれたと感じています。もちろん勉強も大切ですが、留学でしか得られない生の経験を多く積むことを意識してもらいたいです。

最後にシアトル留学生に向けてアドバイスをお願いします。

コロナ禍で、思うような留学生活が送れていないと感じる留学生は多いと思います。今は心身共に本当につらい時期ですが、元シアトル留学生のひとりとして言えるのは、「今、学生として2020年の米国シアトルを体感していること」が将来の何よりのアドバンテージになり得るということです。

全米に広がったブラック・ライブズ・マター(BLM)運動やコロナ禍が改めて浮き彫りにしたのは、「人種差別や分断の再燃」、「ここ20年のグローバル化の再考」、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性」、「持続可能な社会への疑問」といった、これから私たちの世代(ミレニアル〜Z世代)が世界的に直面している課題です。こうした課題を克服するヒントを、シアトルという街・人・地域は持っています。特に「多様性」、「デジタルイノベーション」、「環境意識」については、日系アメリカ人コミュニティーなど地域としての歴史や経験、知恵を持つシアトル、ワシントン州という地域のあらゆるところにそのヒントが隠れています。

コロナ禍で大変な局面ではありますが、豊かなシアトルにいる学生の皆さんは、今まさにそうした諸課題の解決を図る能力を耕している最中と言っても過言ではないと思います。その第一歩として、オンラインでもリアルでもできる範囲で「足で稼ぐ(街を歩く)」、「現地の人の話を聞く」機会を増やせば、出会いや幸運、発見が転がり込んできます。たとえば、日々ニュースをチェックして、現地の友人とビデオ通話で議論するのはどうでしょう。

ある意味では、この時代の転換期に米国シアトルを体験した学生のマインドは、良識ある日本の企業でもきっと求められるはずです。


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