[メキシコシティ(メキシコ)]
標高約2,200メートルの高地に位置し、かつて湖が広がっていた土地に築かれたメキシコシティ。古代文明の記憶、緑豊かな公園、空から眺める大都市の景色には、ビーチリゾートとはまた違う、奥行きのある旅の魅力が広がっています。歴史と現代の暮らしが重なり合う街を歩き、その多彩な表情に触れました。
国立人類学博物館の中庭。水音が響く開放的な空間が館内巡りの印象を深める
メキシコシティで最初に足を運びたいのが、国立人類学博物館だ。アステカ文明、テオティワカン文明、マヤ文明など、メキシコの歴史や文化を知るうえで欠かせない展示が並ぶ。館内に入ると、石像や装飾品、巨大な展示物が歴史の重みを湛え、静かに迫ってくる。教科書の中の「古代文明」が、目の前の現実として立ち上がってくるような感覚だ。展示の一つ一つは美術品としても見応えがあるが、そこに暮らした人々の知恵や祈り、宇宙観に思いをはせると、メキシコという国の見え方が少し変わってくる。リゾート地としての明るいイメージだけでなく、何層にも重なる文化の奥深さに触れることができる。
赤い壁を背景に浮かび上がる石彫展示。造形の力強さが、古代文明の存在感を物語る
博物館を出ると、街の表情はまた変わる。周辺には、シアトル最大のディスカバリー・パーク約3個分にもなる広大なチャプルテペック公園が広がり、木々の間を散策する人、ベンチでくつろぐ人、家族連れの姿が目に入る。大都市でありながら、緑が日常の中に息づいているのが印象的だ。
さらに新鮮だったのが、メキシコシティの公共交通として整備された空中ゴンドラ「カブレブス」での移動だ。ゴンドラの窓から街の広がりを一望できる。地上を歩いているだけでは気づかない住宅地の色彩、道路の流れ、遠くに続く都市のスケール。観光名所を「点」で巡るだけでなく、街全体を「面」で感じられる体験だった。
カブレブスの車窓から望むメキシコシティ。緑地と住宅地が広がり、都市の大きさを実感する
この街を知るうえで、もうひとつ興味深いのが水との関わりだ。中心部一帯には、かつてテスココ湖の島に築かれたアステカ帝国の都、テノチティトランがあった。その成り立ちは14世紀ごろまでさかのぼる。人々は水路や堤、人工島の畑を作り、水と共に暮らしながら都市を広げていった。スペインによる征服後、洪水を防ぐため湖の排水や埋め立てが進められ、現在の大都市へと姿を変えていったという。湖底だった土地に広がるこの街は、今も地盤沈下や水不足といった課題と向き合いながら、形を変え続けている。
その名残を感じられる場所のひとつが、世界文化遺産にも登録されている市南部のソチミルコだ。色鮮やかな小舟「トラヒネラ」に乗って水路を進むと、都市の喧騒から少し離れ、ゆったりとした時間が流れるエリアに。観光地らしいにぎわいはありながらも、水辺の緑や小舟の揺れに身を置くと、かつて湖と水路が広がっていた街の記憶が今もこの地に残っているように感じられた。
ソチミルコの水路に並ぶ色鮮やかなトラヒネラ。ゆるやかに進む船上から、街のもうひとつの表情が見えてくる
古代文明の重み、都市の緑、空からのパノラマ、そして刻まれた水の記憶。その一つ一つを丁寧にたどるほどに、メキシコシティという街が幾重にも重ねてきた歴史のロマンに心を奪われていく。次のメキシコ旅ではビーチリゾートだけでなく、この大きな街の鼓動にも耳を澄ませてほしい。
メキシコシティを楽しむための旅メモ
•アメリカの携帯電話はメキシコでも利用できる場合が多いため、出発前にローミングの可否、料金、データ容量を確認しておこう
•旅行日程、宿泊先、現地での連絡先を家族や身近な人に共有しておこう
•同行者や家族とは、スマートフォンの位置情報共有をしておくと安心
•夜の予定は、出かける前に帰りの移動手段まで確認しておこう
•日本語で確認できる安全情報も活用しよう
外務省「たびレジ」
www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html
外務省海外安全ホームページ/メキシコ
www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_264.html
在メキシコ日本国大使館/安全情報
www.mx.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/seguridad_anzen.html
シアトルからの行き方 メキシコシティ国際空港まで、アエロメヒコ航空の直行便で約6時間。


















