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古代の記憶と華麗な建築、歴史地区で出合うメキシコシティの素顔 [メキシコシティ(メキシコ)Vol. 3]〜旅好きのお気に入り

古代の記憶と華麗な建築、歴史地区で出合うメキシコシティの素顔
[メキシコシティ(メキシコ)Vol. 3]

古代都市の記憶と植民地時代の建築、そして今の暮らしが折り重なるメキシコシティの歴史地区。ソカロ周辺を起点に名所をつないでいくと、この街の奥行きと素顔が少しずつ見えてきます。

取材・文:溝江暁子

ソカロ広場に建つメトロポリタン大聖堂。歴史地区らしい重厚な景観が広がる

歴史地区散策はソカロ広場から始めたい。正式名称は「憲法広場」。国旗がはためく広大な空間を囲むように、メトロポリタン大聖堂や国立宮殿、市庁舎などの重厚な建物が並び、メキシコシティの中心に来たことを実感する。そのスケールは圧倒的で、観光客、地元の人、物売り、警備の人々が行き交い、朝から街のエネルギーに満ちている。周囲を見渡すと、政治、宗教、歴史、日常が同じ空間に重なっていることが伝わってくる。

現代の街並みのすぐそばに残るテンプロ・マヨール。古代都市の記憶が足元に息づく

すぐそばにあるテンプロ・マヨールは、かつてこの地に栄えたアステカ帝国の都、テノチティトランの中心的な神殿跡。現代のビルや教会の足元に古代遺跡が広がる光景は、この街ならではの驚きだ。石段や神殿跡を歩いていると、現在の街並みの下に、さらに古い時間が眠っていることを体感できる。歴史地区の魅力は、こうした時代の層が、遠い過去の話ではなく目の前の風景として立ち上がってくるところにある。

ソカロ周辺の街並みを楽しみながら、歩行者天国のようににぎわうマデロ通りをゆっくり進む。ショップやカフェ、土産物店が並び、観光客に加えて地元の人の往来も多い。歴史ある建物の1階に現代的な店が入っている様子にも、メキシコシティらしい新旧の重なりが感じられる。建物の装飾や看板、路上の音楽に目を留めながら歩くと、単なる移動時間も街歩きの楽しみになる。

カサ・デ・ロス・アスレホスの吹き抜けの店内。青いタイルと細やかな装飾が美しい

昼食はマデロ通り沿いのカサ・デ・ロス・アスレホス(Casa de los Azulejos)へ。外壁を覆う青いタイルがひときわ目を引く歴史的建築で、かつてはバジェ・デ・オリサバ伯爵家の宮殿だった。現在は老舗チェーン、サンボーンズ(Sanborns)のレストランとして親しまれている。吹き抜けの店内は天井が高く、装飾の華やかさに心を奪われる。まるで伯爵家の午餐会に招かれたような高揚感に包まれる。料理は高級レストランのようにかしこまったものではなく、伝統的なメキシコ料理や軽食が中心。宮殿のような空間にいながら、肩肘張らずに食事を楽しめるのもうれしい。

午後は、さらに西へ歩いて建築めぐりを続ける。途中でぜひ足を止めたいのが、郵便宮殿(Palacio Postal)だ。今回は残念ながら中に入ることはできなかったが、外観だけでも十分に見応えがある。細やかな装飾が施された重厚な建物は、かつて郵便が都市の重要なインフラだった時代の誇りを今に伝えているようだ。次回はぜひ内部の階段や天井装飾も見てみたい。

その先に現れるのが、白い大理石の外観が美しいベジャス・アルテス宮殿。重厚な歴史建築が続くなかで、やわらかな曲線を描くこの建物はまた違った華やかさを放っている。写真を撮るなら、夕方の光が外壁をやさしく照らす時間帯がおすすめだ。すぐそばにはアラメダ・セントラルが広がり、ベンチで休む人や待ち合わせをする人の姿も見られる。壮麗な建築と日常のくつろぎが隣り合う風景に、メキシコシティらしい奥行きが感じられる。

チュロスの名店エル・モロ。揚げたてのチュロスを目当てに多くの人が訪れる

歩き疲れたら、チュロスの名店エル・モロ(Churrería El Moro)へ。揚げたてのチュロスに砂糖がまぶされ、濃厚なホットチョコレートやコーヒーと一緒に味わう時間は、街歩きの小さなご褒美だ。歴史地区は見どころが近くに集まっている一方、石畳の道を歩く時間も長くなる。腰を下ろせば街のにぎわいを眺める余裕が生まれ、店内の活気や甘い香りも織り交ざり、旅の記憶を鮮やかにしてくれる。

古代遺跡、植民地時代の建築、近代の華やかな建物、そして現在の人々の暮らしがすぐ隣り合う歴史地区。ひとつの時代だけでは語れない重なりこそ、メキシコシティの面白さだ。

標高の高い街なので、こまめな水分補給を忘れず、歩きやすい靴で出かけたい。

ソカロから名所をつないで歩く1日は、華やかな建築の奥に、人々の暮らしと長い歴史が息づくこの街の素顔を感じさせてくれる。

 

シアトルからの行き方

メキシコシティ国際空港まで、アエロメヒコ航空の直行便で約5時間半。