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シアトルのわが家の住民たち、その1〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

「みきこ、あなたのうちのテナントがけんかしている。うるさくて眠れない!」

と隣家のスーザンから、東京に帰っている私にメッセージが来た。現地時間午後11時1分。彼女はDVだと思うと言う。早速テナント(男性)にテキストを送り、隣人の苦情を伝えた。

「友人が集まってポーカーをしていたのだけれど、ちょっとうるさ過ぎましたネ。気を付けます」とのこと。それで、

「シアトル市では朝7時から夜11時までが『昼間』と解釈されている」

とメッセージを送ると、

「では、11時まではどんなに騒いでもいいってことですね?」

「まあ、理屈ではそうなるのだけれど、実際、隣人と問題なく生活したいのなら、話は別だわね」

彼の両親はウクライナ出身だそうだ。先週はポーチにつないでおいた高価な自転車を盗まれ、ちょうどロシアのウクライナ侵攻と重なり気落ちしていた時だった。それで友人が励まそうと集まったようだ。でも、スーザンは信じない。

「女の子の声が聞こえたわ」と。

いずれにしても、少し恥ずかしかったのは否めないようだ。静まり返ったし。テナントには、「シアトル市のゴミ出しやリサイクルなどの規則を守り、ちゃんと期日に家賃を納めてくれれば、私はテナントの生活には干渉しない」と宣言したばかりだった。

「ウクライナの親戚は大丈夫? 少し心配しているけれど」

と伝えると、「気にかけてくれて、ありがとう」とうれしがっていた。一件落着。

下の住民(男性)は、離婚して3人の娘、4歳から13歳までがいる。子どもの親権があり、1週置きの週末だけ一緒に私の家の地下アパートで過ごす。普段は車で10分くらいの所にガールフレンドと住み、その週だけは金曜からアパートに来て準備をする。

「彼はいいお父さんだわ」とスーザンのお気に入り。「かわいそうに、この週末、子どももいたんだわ。あんなけんかを子どもも聞いてしまったのね」

彼も上の住民にうるさいと文句を言ったようだ。だが、彼の問題はトイレが詰まってしまったことだ。家にあったプランジャーより性能のいいのを探し、娘たちが来る前に自分で解決しようと躍起になっているところだった。以前使ったことのある水道業者を紹介したが、土日は料金が高い。どうにか直った! と少し経って連絡があった。

「やっぱりいい父親だわ」と言うスーザンは、近所の見張り番。隣のポーチで年がら年中タバコを吸いながら、道行く人をチェックし夜も耳をそばだて、たまに自分で「パトロール」をしてホームレスのRVを監視している「おせっかいオバサン」だ。なぜか私とは直接話したがらないが、私はとても感謝している。(続く)

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。