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目黒不動尊と大鳥神社〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

みきこのシリメツ、ハタメーワク

目黒不動尊と大鳥神社

昨年末、44年住んだアメリカを引き上げ東京の実家に落ち着いた。さてこのコロナ禍で、築50年強の古屋敷の改築をどうしようと考えあぐねている今日この頃。キシキシ音を立てる押し入れの襖や、半分はげた桐たんすの引き出しを開けてみると、いろいろ出てくる。およそ20年前に他界した父の眼鏡など、「ああ、参観日にこれしてよく学校に来たっけ」とか、「なんでこんなに古い鍵やキーホルダーがあるのよ」などとひとり言を言いながら、とにかく古い荷物は片付けなければならない。

ほんの少し、父との対話を楽しみながら何気なく引き出しを開けてみると、どうして良いかわからないものに出合った。小さな桐の箱がいくつもある。表には赤い鶴の絵が色あせている。

「やーだ、へその緒?」。案の定である。3人姉妹なのになんで5個? と思い、開けてみると、姉の子どものと、もっと古いのはたぶん私が生まれる前に他界した兄のなのだろう。こういうの、父がいる時一緒にやりたかったなぁ。綿の間にくるまれた2センチほどの、干からびてわけのわからないようなものである。娘が首を突っ込んできて、「わっ、気持ち悪い!」と踵を返す。

これはお寺に持って行って供養と焼却をしてもらうのがいいように思った。そこで、父が亡くなる前日まで毎日散歩に行っていた、近所の目黒不動尊に行ってみた。もう何十年も、毎朝の散歩は15分ほどの林産試験場からお不動さんと決まっていた。子どもたちが住んだ4年間は毎週末一緒に「林試の森」でハトに餌をやり、お不動さんへ回り、帰りに付近の焼き鳥屋で1、2本買い食いをして帰ってくるのであった。

ちょうど参拝の時間で、お経と木魚の音が紅葉のすがすがしい秋の空気の中に響き渡り、何とも日本の晩秋を肌で感じたひと時であった。

詰め所のお守りを売っているところでちょっと質問。「他の社寺のお札・お守りのおたき上げは受け付けておりません」という張り紙がしてある。

「はい、お断りしています。きりがないので」という答えが返ってきた。檀家しか面倒を見ないらしい。この若い坊さんと掛け合っても堂々めぐりと思い、「こういう場合はどうしたらいいんでしょうね?」と聞いてみた。「神社にでも持って行かれたら?」。大鳥神社でも同じようなことを言われた。日本の宗教って、何なんだろう?

ネットで調べてみた。「へその緒はどうするの?」

「自分が死んだ時、一緒にお棺に入れて火葬してもらえばいいんだよ」という答え。なんだ、そんな簡単だったのか。

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。