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ハリウッドの新たな金鉱
A Minecraft Movie/
(邦題『マインクラフト/ザ・ムービー』)
劇場初登場で1位を獲得し、1億6,300ドルを稼ぎ出した超ヒット映画。本作は、2023年の世界売上本数が3億本に達した、世界で最も売れたインディーズゲーム「マインクラフト」の実写版だ。このゲームのユニークさは、目的が設定されておらず、プレーヤーが自分で3Dブロックの世界を作り上げ、ブロックを集めながら自由に世界を広げていく点にある。作り手の想像力と創造性が問われるこのゲームの対象年齢は5、6歳以上。実際、地元の劇場では珍しく完売となり、隣に座っていたのは5歳ぐらいの少女。時々、スクリーンに向かって声をかけ、食い入るように観ている姿に驚かされた。つまり、5歳児でもわかる映画ということでもある。
物語は、子どもの頃から採掘場(マイン)で働くことが夢だったスティーブ(ジャック・ブラック)が、青く光るキューブを発見し、突如、すべてがキューブでできたバーチャル世界に転送されるところから始まる。そこは「マイクラワールド」。スティーブは自分の思い通りに何でも作り出せる世界が気に入る。次に、光るキューブを手に入れ現実世界から迷い込んできた4人が登場。ゲーム店の店長ギャレット・ザ・ガベージ・マン(ジェイソン・モモア)、改造やものづくりに長けた少年ヘンリー(セバスチャン・ユージン・ハンセン)、弟思いの姉ナタリー(エマ・マイヤーズ)、そして動物園を作りたい不動産屋ドーン(ダニエル・ブルックス)。彼らはスティーブの知恵と力を頼りにマイクラワールドで生き延びつつ、脱出の方法を探っていく。この過程でゲームならではのキューブを使った家作りや武器作りが再現され、レアなピンクのヒツジや食料となるチキン、そして夜になると現れる攻撃的なゾンビなど、マイクラファンならおなじみのキャラが続々と登場し、冒険を盛り上げていく。本作に躍動感を与えているブラックは『カンフーパンダ』風のアクションで大活躍、アクアマンで知られる人気俳優モモアも落ちぶれたゲーマーをコミカルに演じて付き添いの親世代の観客を楽しませていた。娯楽映画としての完成度は高い。
今や映画産業は完全にゲーム産業に凌駕 されいる。かってはヒット映画をゲーム化する流れが主流だったが、現在ではヒットゲームを映画業界が後追いしている。本作も世界で3億本売れたゲームの実写版なら確実にゲームファンが観にくるだろうという前提で企画されたのだろう。スーパーヒーロー映画が飽和状態にある現状で、ヒットゲームの実写化はハリウッドの新たな金鉱に違いない。それにしても、異世界に閉じ込められた登場人物たちが脱出を目指すという本作のストーリーは、目的を設定せず自由な創造を楽しむというマイクラ本来の理念を裏切ってはいないか。本作にはプレイヤーが思い思いに世界を創り上げていくというユニークさがほぼ反映されていなかった。映画よりゲームを選ぶ層が増えていく背景には、そうした違和感が潜んでいるのかもしれない。
A Minecraft Movie/
(邦題『マインクラフト/ザ・ムービー』)
写真クレジット:Warner Bros. Pictures
上映時間:1時間41分シアトル周辺ではシネコンなどで、標準、3D、4DX、IMAX等にて上映中。