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食後の歯磨きで糖尿病や心血管疾患が防げる?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

食後の歯磨きで糖尿病や心血管疾患が防げる?

歯磨きの回数に関して、磨き過ぎは良くない、1日2回が良い、毎食後磨くべきなどと議論が絶えません。現段階の歯科医師会の見解では、「1日2回以上」。実際の研究結果から、3回以上磨いても、2回と比べてそんなに違いがないということです。このコラムでも歯周病と全身疾患の関係について何度も取り上げてきましたが、今回は日本の聖路加国際病院で行われた研究(*)を中心に書きたいと思います。

*Association between toothbrushing and risk factors for cardiovascular disease: a large-scale, cross-sectional Japanese study | BMJ Open

2016年の聖路加国際病院の研究

2004年1月から2010年6月まで、聖路加国際病院で毎年健康診断で受けている人のうち、30歳以上85歳未満の8万5,866人を対象に調査を行いました。毎食後の歯磨き回数によって、1.1日3回以上、2. 1日1回以上、3. 1日1回未満の3グループに分け、それぞれ a. 高血圧、b. 糖尿病、c. 脂質異常、d. 高尿酸血症、e. 腎不全の有病率について比較検討した結果は以下の通りです。

1日1回未満群と比べ統計的有意差あり

歯磨きの回数が1日1回未満のグループで、高血圧、糖尿病、脂質異常、高尿酸血症、腎不全の有病率が高い傾向が見られます。 統計学的に有意な差としては、3 回以上のグループと1回未満のグループ間の糖尿病と脂質異常の有病率があります。 結論として、歯磨きを怠ると糖尿病や脂質異常などの全身疾患にかかりやすくなる可能性があるということです。毎日の正しい歯磨きの習慣は、口腔内の健康の維持のみならず、全身の健康維持につながります。

歯周病と糖尿病

歯周病の原因のほとんどに口腔内の細菌が関係しています。歯周組織の炎症の際に放出される、ある種のサイトカイン(TNF- α, IL-6など)が血流を通して全身に行き渡り、血糖値をコントロールするインスリンの働きを阻害し、糖尿病にかかりやすくなると言われています。実際に、歯周病が改善されるに伴い、糖尿病診断の指標となる血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値が改善されることはよくあります。歯周病があると糖尿病の発症リスクは2倍、重度の歯周病だと糖尿病患者の虚血性心疾患による死亡率は3倍との研究結果も出ています。

まとめ

毎日の歯磨きは大事ですね。丁寧に時間をかけて磨きましょう。また、定期健診と歯のクリーニングを根気よく続けることです。全身の健康のためにも頑張りましょう。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748