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【新プログラム】スペシャルニーズの療育支援〜私たちの命を守るヘルスケア

がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療施設で今、私たちができることを探ります。

【新プログラム】
スペシャルニーズの療育支援


皆さん、初めまして。在米日本人、日系人の健康と医療を支えるコミュニティー「FLAT・ふらっと」で、スペシャルニーズの療育支援を担当している倉本美香です。
2003年に生まれた長女には、両眼性無眼球症と知的障害を含めた重度の重複障害があります。誕生した当時は、日本で「障害は“障がい”と記載すべき」とか、「障害者は社会のお荷物か」とか、問答が繰り返されていた頃でした。米国ではすでに「スペシャルニーズ」という言葉が使われていたことにとても驚いたものです。「障害児」ではなく「特別な助けを必要としている特別な子ども」という表現に、親として救われる思いがしました。
前身団体「Japanese SHARE」では女性がん患者に向けたサポートが中心でしたが、新団体設立に動き出した昨年より「スペシャルニーズの療育支援」という部門が加わりました。私は医療の専門家ではないものの、手探りながらも障害児を育ててきました。その経験がどこかで役立つことがあればと、運営メンバーとして活動する日々です。
今年はニューヨーク日系人会(JAA)主催のヘルスフェアにて、5月にはキックオフ・イベントを、10月には日本在住の岸田ひろ実さんをゲストに迎え、オンライン・セミナーを開催しました。ひろ実さんは、ダウン症で知的障害のある長男の出産から間もなく、夫の突然死を経験。自身の急性大動脈解離の手術後は、後遺症により車いす生活を送っています。2021年の東京五輪では、車いすに乗ったひろ実さんが長男と並走して聖火リレーをつなぐ場面も。TVの前で見守りながら目頭が熱くなったという方も多いことと思います。私たちの想像を絶するような人生、それでも「今がいちばん幸せ」と笑顔を見せるひろ実さん。セミナーでは、育児書が参考にならない子育てをどのように続けてきたか、当事者だからこそ語れるストーリーを惜しみなく話されていました。セミナー後、私たちの元に「勇気が湧いた」との声がたくさん寄せられました。
ひろ実さんとの会話ではいつも、共通点も多いのですが、私たちのベースが米国であるという違いに改めて気付かされます。長女の子育てで何よりつらかったのは、同じ悩みを持つ方になかなかめぐり会えないこと。自分の意思で渡米し、出産したからこそ、日本にいる家族に心配や迷惑をかけてはいけないと思っていましたし、周囲を見渡しても障害児の子育てで悩んでいる友人は皆無でした。今ほどインターネットに情報が多くない時代、私自身が障害児、スペシャルニーズという固定観念にとらわれ、行動を制限してしまっていたのかもしれません。
日本とは異なり、障害者手帳のない米国では、この症例ならこの支援を受けられるという一定の基準が存在せず、専門家や支援機構の門をひとつひとつたたいて、その子なりの支援を受けられるよう療育計画を進めていかなくてはなりません。スペシャルニーズの場合、わが子にとって何がベストなのか周囲にも聞けないまま、常に正解のない課題を抱え、追い詰められたような気持ちになりがちです。ひと口にスペシャルニーズと言っても、目に見える障害、見えない障害があり、子どもの年齢も生後間もないうちから成人後までと幅広く、さまざまなケースが考えられます。
毎月開催している定期オンライン・ミーティングでも、参加者それぞれの状況は異なります。その場に専門医がいるわけではないため、必ずしもお悩み解決とはならないかもしれませんが、子育てに行き詰まりを感じた時、わが子の成長にふと不安を覚えた時にふらっと参加できる、そんな集まりです。
スペシャルニーズに直接関わりがなくても、何か力になりたい、特別支援教育に携わっているなど、いろんな立場の方々が気軽に立ち寄れる、居心地の良いネットワーク作りを目指しています。皆さんの参加をお待ちしております。

スペシャルニーズの療育支援ミーティング
www.flatjp.org/meeting-special-needs
参加にはウェブサイトの登録フォームにて連絡を。


倉本美香■
「FLAT・ふらっと」理事メンバーで、重複障害を持つ長女を含め二男二女を育てるワーキングマザー。世の中で埋もれている「助けて」の声を拾い上げる一般社団法人「TruBlue」理事も兼任。著書に『未完の贈り物』(産経新聞出版)、『生まれてくれてありがとう』(小学館)がある。
2013年から続く乳がん・婦人科がん患者サポート団体のJapanese SHAREが、2023年4月1日より、ニューヨークを拠点とした非営利団体、FLAT・ふらっとに活動の場を移行。乳がん・婦人科がんのほか全てのがん患者、高齢者、スペシャルニーズのある子どもの保護者を対象とし、在米日本人コミュニティーを健康と医療の面から支える。