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アートの始め方〜実践編

シアトルの知恵ノート

シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に、知っておくと暮らしが豊かになるヒントを聞きました!

アートの始め方 実践編

アーティストの太田翔伍さんに、前回の「モチベーション&アイデア編」に続き、アートの基礎知識を教えてもらいます。今回は「実践編」として、おすすめのツールや具体的な題材についてご紹介。夏休みを利用して、早速始めてみましょう。

良い道具が作品作りの道しるべ

後編では、家ですぐ実践できるアートを紹介したいと思います。前編で形から入るという話をしましたが、まずは具体的な道具について紹介します。

優れた耐水性と耐光性で漫画家やイラストレーターに愛されるピグマ紀伊國屋書店シアトル店で購入可能

いちばんシンプルな道具は、やはり紙とペンです。紙の種類はいろいろとありますが、ごく普通のスケッチブックを使用しても良いし、大きめの画用紙を画材店で購入して好きなサイズにカットしてもOK。個人的には真っ白の紙より、クリーム色(オフホワイト)が好みです。少し表面にざらつきのある、粗めの紙もかっこいい。私のお気に入りのひとつは製紙会社レジオンの「ストーンヘンジ」。アメリカ製コットン100%の紙です。大きなロールを購入し、プロジェクトの仕様に合わせて切り取り、使うようにしています。

ペンは今までかなりたくさん試してきましたが、皆さんも学生時代にお世話になったであろうサクラクレパスの「ピグマ」(アメリカでは「Sakura Pigma Micron」)はおすすめです。ディテールを描くのに、細めの01から03が重宝します。

作品を友だちにプレゼントしたい、もしくは家に飾りたいという場合は、額を最初に買うと良いでしょう。「これだ!」と思う額に出合えれば、作品の大きさ、テイストもそれに合ったものにすることができます。バジェットに余裕があれば、サイズを気にせず自由に制作をしても良いのですが、カスタムで額を注文すると少し高くなります。以前はよく、アンティーク店やグッドウィルなどで安い額を買いあさっていました。今でも質の良いものがあれば購入しています。

想像して楽しいものを題材に

道具がそろったところで、何を描くかは悩みどころですよね。デザイン会社で働き始めて独立し、今でも制作しているのが「バンドポスター」です。バンドはローカルから世界レベルまでさまざまですし、さらにフェス、音楽レーベル用などプロジェクトの種類はいろいろあります。手始めにいちばん好きなバンド/ミュージシャンのイメージポスターを作ってみてはどうでしょうか?

私の場合、今までのアルバム、ミュージック・ビデオ、レコード・ジャケット、ポスターなどをチェックして全体の雰囲気をつかみつつ、かぶらないように注意して制作しています。あとは自分の創造力に任せ、失敗しても良いので描き終えてみましょう。そこから修正したい場所や新しいアイデアが湧き出てきます。

もちろん、音楽ばかりではなく、好きなTVドラマや小説、ファッション・ブランドでも構いません。すでにコンセプトやイメージのあるものを基盤にアートを作成すると方向性が決めやすいうえ、もともと興味のあるものなので楽しく取り組めるでしょう。

期待は小さく、夢は大きく

今年、シアトルのデザイン学校でポスターのクラスを教えていました。初めてのことだったので、なかなか苦労しました。ご存じの方もいるかもしれませんが、ポスター関係の仕事は利益にならないことがほとんどです。人気のあるローカル・バンドでも資金が潤沢とは言えず、バイトやほかの仕事をしながら活動している人がたくさん。私は音楽が昔から好きで、少しでも自分のスキルが役に立てばという思いから、頼まれると可能な限り引き受けています。ミュージック・ビデオに出演したこともあります(笑)。バンド・メンバーやファンの方がとても喜んでくれて、知り合いやコネクションはかなり増えました。実はそのポスターのひとつが某大手コーヒー会社の方の目に留まって声をかけられ、いつの間にか全米で使用されるカップになったことも。今では大きな壁画の依頼もあり、忙しい生活が続いています。

当たり前のことですが、どんな小さな仕事でも誰がいつ見ているかわからないので、いつも全力で取り組んでいます。もし興味がありましたら私のウェブサイトに作品がありますので、見てみてください。まだまだ修行中の身ですが、皆さんのアート・ライフを少しでも有意義にするために、刺激を与えられたら幸いです。

太田翔伍■岐阜県出身。日本の高校を出て、アイダホ大学でアートを専攻し卒業。シアトルのデザインスタジオ、モダン・ドッグ・デザイン・カンパニーにインターンを経て入社し、2012年にタイヤマン・タジオを立ち上げて独立。スターバックスやグーグル、フェイスブックなど、さまざまな企業やブランド、プロダクトとのコラボレーションの実績を持つ。

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