子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
怒りと依存
~子どもと自分を守る、怒りとの付き合い方~
子どもに向かってつい声を荒らげてしまい、あとで自己嫌悪に陥り「もっと優しく言えたのに」と後悔する親は少なくありません。実はその「怒り」、依存のような性質を持っていることをご存じでしょうか?
「怒り」に依存してしまう仕組み
キレやすい人は、ストレス、疲労、トラウマ、発達特性などさまざまな要因により、感情を抑制して理性的な判断をする脳の部位「前頭前野」が未発達のまま、もしくは機能低下を起こしています。ストレスを感じると「扁桃体」が「敵だ!」という信号を出し、交感神経が優位になり闘争・逃走反応を引き起こします。通常は前頭前野がその反応を抑制して理性的に問題を解決するのですが、前頭前野がうまく機能しないと、力で無理やり問題を解決しようとします。さらに、怒鳴った後にスッキリする感覚や、相手を黙らせて「勝った」という気持ちが「線条体」などの報酬系の脳回路を刺激して、その行動を強化します。つまり、怒りを使って人をコントロールしようとすればするほど、攻撃行動が報酬的に処理され、その行動が強化されて「怒り」に依存していくのです。
子どもを怒鳴ると「負のループ」に
親が子どもを頻繁に怒鳴ると、子どもの心にどのような影響が出るのでしょうか。たとえば、食事中に食べ物をこぼした、テストで良い点が取れなかったなどの理由で怒鳴る・叱ることを繰り返していると、子どもは「安心して失敗できない」「常に顔色を伺う」ようになります。怒りの爆発を繰り返す家庭環境では、子どもは情緒不安定になったり自分の気持ちを表現するのを恐れるようになります。多くの研究で、怒りを頻繁に受けた子どもは、脳の扁桃体が過敏になり、将来的な不安障害や攻撃性のリスクが高まる可能性が示唆されています。
子どもは、感情の扱い方を親から学びます。親に向かって抵抗できない場合は、その怒りを無意識のうちに自分よりも弱い立場に向け、妹や弟、クラスメートへのいじめ、もしくは自分を傷つける自傷行為へと向けることもあります。怒りは生存本能に直結した感情なので、悲しみや喜びなどの他の感情よりも影響力が強いことが最近の研究で分かっています。北京航空航天大学の研究者たちは、7,000万件以上の投稿から4つの基本感情をマッピングし、怒りがほかの感情よりもより速く、より広範囲に広がり他人に「伝染」することを報告しました。親自身が怒りを子どもに伝染させないことが、何よりの教育だといえるでしょう。
「怒り」に支配されない習慣づけ
怒りを感じたとき、私たちがするべきは、相手に怒りをぶつけることではなく、まずは自分で怒りを静めることです。怒りは二次感情とも呼ばれており、その奥には元となる別の感情「恐れや不安」「罪悪感」「悲しみ」などの本当の気持ちや「相手にしてほしいこと」といった期待感が隠れています。落ち着いて怒りを処理すれば、自分の本当の感情や期待に気づくことができます。
以下のような方法が、怒りに支配されない習慣づけの一部です。
1. 書いて捨てる頭に浮かんだ怒りや不満を紙に書き出し、それを破ったり捨てることで感情を外に出します。これは感情処理に有効な手段として支持されています。
2. 呼吸を深くする普段から意識して4秒吸って8秒吐くというリズムでゆっくり呼吸すると、自律神経が落ち着きます。
3. 本当の気持ちや望みに気づく「なぜ怒ったのか」「分かってくれなくて悲しかった」「話を聞いてほしかった」と本当の自分の気持ちを聞いてあげます。
2. 呼吸を深くする普段から意識して4秒吸って8秒吐くというリズムでゆっくり呼吸すると、自律神経が落ち着きます。
3. 本当の気持ちや望みに気づく「なぜ怒ったのか」「分かってくれなくて悲しかった」「話を聞いてほしかった」と本当の自分の気持ちを聞いてあげます。
こうした自己対話の習慣を続けていけば、怒りを感じたときに6秒間深呼吸をすれば怒りは収まるという「6秒ルール」をマスターできるかもしれません。怒りは私たちの防衛本能の一部です。完全に無くす必要はありません。ただ、それに飲み込まれるのではなく、うまく扱えるようになることが大切です。
感情と向き合う親の背中を、子どもはしっかりと見ています。自分と子どもを怒りの連鎖から守るために、怒りを感じたときこそ「自分の本当の望みを知るチャンス」と解釈を変えてみましょう。















