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ティーンの自己肯定感を高める方法 〜ふたつの自己肯定感とは?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

ティーンの自己肯定感を高める方法
〜ふたつの自己肯定感とは?〜

自己肯定感が高い人は、目標達成に向けて積極的に行動し、仕事や生活の満足度、さらには全体的な幸福感が高いことが数々の研究で明らかになっています。自己肯定感とは何か、また子どもの自己肯定感を高めるためにどうすればよいかについて解説します。

ふたつの自己肯定感

自己肯定感とは、自分自身をどのように評価し、受け入れるかという主観的な感情です。個人の経験や信念といった「内部要因」と、家族や社会の評価などの「外部要因」が複雑に絡み合い、常に変動する動的な概念です。

自己肯定感は「全体的」なものと「条件付き」のものに分けられます。「全体的」な自己肯定感とは、特定分野や技能に限定されず、「自分そのもの」を認める感情です。いわゆる「自己肯定感が高い人」は、自分の長所も短所もひっくるめて「私はこれでいい」と思える人です。このような人は、自分に嘘をつく必要がないため、難しい目標にも迷いなく挑戦し、成功しやすくなります。

一方、「条件付き」自己肯定感は、学力や運動能力、外見など特定分野での優劣を評価する感情です。「パフォーマンス・ベース」の自己肯定感とも呼ばれ、うまくいっているときは優越感を抱きますが、失敗すると劣等感を感じたり落ち込んだりします。これにより、失敗を恐れて挑戦を避けたり、過度に完璧主義に陥ったりすることがあります。一方で、劣っていると思う他者を見下すことで自分を保とうとすることもあり、感情が状況に左右されやすくなります。

SNSの与える多大な影響

現代のティーンは、他人の楽しそうなイメージが次々と投稿されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にどっぷりと浸かり、「条件付き」自己肯定感が刺激されやすい環境にいます。米国の調査によると、13歳の女子の50パーセントが自分の体に不満を持ち、17歳になるとその割合は80パーセントに達します。整形手術を考えるティーンも増加しており、SNSの使用頻度が高いほど、心の健康が損なわれるとの報告もあります。SNS上では、自分の良い部分のみを見せ合う関係が生まれやすく、結果として表面的なつながりが増えます。そのため、本当の自分を見せられない孤独感からさらに「いいね」の数を求める悪循環に陥るリスクが高まります。

子どもの自己肯定感を高める具体的な方法

1.そのままの子どもを受け入れる

子どもの良い部分のみを認めても「全体的」な自己肯定感は育ちません。親が良かれと思って細かく指摘し続けると、子どもは「今のままの自分じゃダメ」と思い込んでしまいます。子どもの欠点を認め、「今のままのあなたで十分」「成績が良くても悪くても、あなたが大好き」と繰り返し伝えましょう。生きているだけでその子には価値があります。子どもの気持ちを受け止め、声を聞いてあげましょう。子どもにダメ出しをしたくなるときは、まずは自分自身の欠点や否定的な感情を受け入れることから始めてみてください。

2.子どもの良いところを30個リストアップ

子どもの存在そのものを認めたうえで、「頑張り屋」「きれい好き」など努力や好ましい特徴を30個リストアップし、本人に伝えましょう。そうすることで、子どもは自分の個性を認識し、自分はできるという自信につながります。結果として、自然とやる気が生まれ、将来の夢や目標に向かって行動する可能性が高まります。

3. SNSの使い方を見直す

現在の生活を見直し、親子で「デジタル・デトックス」に挑戦してみるのも効果的です。SNSを見ない日を作り、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、信頼できる友人と会ったり趣味に没頭したりと、自分自身とのより深い関係を築く習慣を促します。

社会が目まぐるしく変貌を遂げる中、流されずに自分らしく生きていくためには、自分の欠点も受け入れる健全な自己肯定感が不可欠です。絵本作家ドクター・スースの言葉「際立つように生まれついたのに、なぜ周りに合わせようとするの?」のように、子どもは皆、それぞれに素晴らしい個性を持っています。それをそのまま認め、子どもが自分自身の個性を大切にする心を育てられるといいですね。
長野 弘子
ワシントン州認定メンタルヘルス・カウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com