米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
アメリカ国外滞在中に
グリーンカードがないことに気づいたら
グリーンカード(永住権)保持者が、短期間の海外旅行や一時帰国の後にアメリカへ再入国する際には、通常パスポートとグリーンカードの提示が求められます。ところが、アメリカ国外滞在中にグリーンカードを紛失、破損・盗難にあう、あるいはグリーンカードを持たずにアメリカから出国してしまうといったトラブルは珍しくありません。そのような場合、再入国に必要な手続きや対処方法を理解しておくことが重要です。
最も簡単な解決策:家族に郵送してもらう
アメリカ国内の自宅にグリーンカードを置き忘れた場合は、家族に滞在先へ郵送してもらうのが最もスムーズで費用もそれほどかかりません。ただし、国際郵便には紛失のリスクがあるため、追跡番号付きの発送方法を選びましょう。
ボーディング・フォイル(Boarding Foil)を申請する
郵送が不可能な場合は、米国大使館・領事館で「ボーディング・フォイル」を申請します。これはグリーンカードなしでアメリカに再入国するために必要な旅行書類で、航空会社に対し、グリーンカードがなくても搭乗できることを証明するものです。日本では、東京の米国大使館、または大阪と那覇の米国領事館で申請することができます。
申請の条件:
• アメリカ国外滞在が1年未満であること
• その間に紛失・破損・盗難にあった場合
請手順と必要書類:
1. 警察に紛失・盗難届を提出する(該当する場合)
2. USCIS(米国移民局)のウエブサイトから申請料金を支払い、支払い確認書を印刷する
3. 米国大使館・領事館で面接を予約する
面接時に持参する書類:
• 事前に記入済みの申請書Form I-131A
※Form I-131とは異なるので注意
• 申請料金の支払い確認書
• パスポート
• アメリカを出国した日が確認できる航空券
• グリーンカードのコピーなど永住者であることを証明できる書類
• 過去12カ月以内にアメリカに居住していたことを証明できる書類
• 警察に提出した紛失・盗難届(該当する場合)
• ボーディング・フォイルが必要になった経緯の説明文
• 証明写真1枚(米パスポートサイズ、背景白、カラー、撮影から30日以内)
注意:ボーディング・フォイルは面接当日には発行されるわけではありません。審査期間は個々の状況によって異なりますので、各米国大使館・領事館に確認してください。
米国永住者としてのステータスの証明が必須
必要書類からもわかるように、ボーディング・フォイルを申請するには、合法的な永住者であることを証明しなければなりません。単にグリーンカードを紛失・盗難にあったということだけでは不十分で、アメリカ国外での滞在が一時的なものであり、永住者としてのステータスを放棄したり、失っていないことを示す必要があります。
アメリカ入国を保証するものではない
ボーディング・フォイルは、航空会社に対し、グリーンカードなど通常アメリカ入国に必要とされる書類を提示しなくても搭乗できることを証明するもので、アメリカへの入国を保証するものではありません。入国許可はあくまでアメリカ到着後の入国審査で判断されます。また、グリーンカードを紛失・盗難にあった場合には、入国後速やかに再発行手続きを行わなければなりません。
1年以上国外滞在してしまった場合
再入国許可証(Reentry Permit)がないまま1年以上アメリカ国外に滞在すると、ボーディング・フォイルでは再入国することができません。この場合は、帰国居住者特別移民ビザ(SB-1)、あるいは新規の移民ビザを申請する必要があります。有効期限切れの場合 10年有効のグリーンカードが国外滞在中に失効した場合でも、滞在が1年未満であればボーディング・フォイルは不要です。期限切れのグリーンカードとパスポートで入国審査を受け、アメリカ入国後は速やかにグリーンカードの再発行申請を行います。ただし、この状況で飛行機に搭乗できるかどうかの判断は航空会社によるため、事前に確認することを推奨します。

















