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移民局申請費がさらに値上げへ

5月4日に移民局は、申請費の値上げ予定の公示を官報 (Federal Register) に掲載し、60日間に渡って、広く一般からの値上げに対する意見の募集を開始しました。60日間の意見公募期間は、行政機関が規則・規定を変更するときには、その通知を官報に掲載し、その変更を一般に周知させるとともに、それに対する意見を募集し、規則・規定の最終的な変更に対して、一般の意見を反映させることが求められているからです。
移民局の申請費値上がりは、もちろん今回が初めてではなく、2007年には平均66パーセントの値上がり、2010年には平均10パーセントの値上がりがなされていました。今回は、平均21パーセントの値上がりとなっています。上昇率を見る限りは、2007年以前と比べると、2倍になった計算です。この10年間で、約2倍に上昇した申請費ですが、移民局での審査のスピードアップには全く役に立っていないどころか、審査のスピードは年々遅くなっているとの批判があります。
今回の申請費値上げにより、移民局は新たに1171人の審査官を採用すると計画しています。
今回公示されたのは値上げのみではなく、その他申請費の支払いのチェックなどが銀行によって適切に処理されずに”支払い不能”で戻された場合の申請の取り扱いに関しても、規定の変更が提案されています。現行の規定では、もし申請費のチェックなどが銀行によって支払い不能として戻された場合は、14日以内に罰金を含めて新たな支払いをすれば、申請は引き続き審査されます。しかし、今回提案されている新しい規定では、同様の場合には申請が却下されることになります。
チェックなどが支払い不能になるのは、単に口座の残高不足のみならず、銀行のミスや銀行システムの一時的な障害によっても起こる可能性はあります。このような場合に、一律申請が却下扱いされてしまうと、申請受付のタイミングが重要になってくる状況の場合に、取り返しのつかない大きな影響が発生する可能性が考えられます。
またチェックの支払い不能以外にも、申請が却下されうる場合として、新たに〝規則・規定通りに申請されていない請願”も却下の対象として含まれるように提案されています。
移民局の申請では、詳細な部分では移民局の規定でも明確に指示されていない場合もあり、何を持って〝規則・規定通り“ではないという判断となるのか基準が不明であり、裁量権の誤用を招きやすい規定と言えるでしょう。
提案されている主な申請の申請料には次のようなものがあります。

グリーンカード更新: 現行365ドル→新規455ドル

非移民労働者申請・就労ビザ: 現行325ドル→新規460ドル

雇用関係による移民ビザ申請(I-140): 現行580ドル→新規700ドル

永住権資格への変更申請(I-485): 現行985ドル→新規1140ドル

就労許可証申請(I-765): 現行380ドル→新規410ドル

市民権申請(N-400): 現行595ドル→新規640ドル

なお、これらは現時点ではあくまで移民局の新しい規定・規則の提案の公示という手続き段階であり、まだ実施されているものではありません。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118