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H-4・E・L-2ビザ保持者の就労許可に関するルール変更

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

H-4・E・L-2ビザ保持者の就労許可に関するルール変更

11月、配偶者のビザ保持者を対象とするルール改正が発表されました。

H-1Bビザ保持者の配偶者はH-4ビザ、L-1ビザ保持者の配偶者はL-2ビザですが、Eビザの場合、メインのEビザ保持者と配偶者のビザは同じです。たとえば、E-1ビザ保持者の配偶者にはE-1ビザが、E-2ビザ保持者の配偶者にはE-2ビザが発行されます。配偶者用のEビザおよびL-2ビザ保持者は、アメリカで就労できますが、ビザの取得によって自動的に就労が認められるわけではありません。就労が認められるには、入国後に移民局で就労許可を申請し、EADと呼ばれる就労許可証を取得する必要があります。

以下の条件を満たすH-4ビザ保持者も同じように、移民局によるEADの発行を経て就労が可能です。

  1. 配偶者であるH-1Bビザ保持者が、すでに認可されている雇用による移民ビザ申請の受益者である、または、

  2. 配偶者であるH-1Bビザ保持者が、 AC21(American Competitiveness in the 21st Century Act of 2000)の106条(a)項および(b)項の下、6年目以降の H-1B 滞在の延長が許可されている。これは、H-1Bの満期である6年を超えた状態で、それ以降もH-1Bビザ保持者としてアメリカに滞在し、就労ができる状態にあるH-1Bビザ保持者のことです。

前述の通り、EとLビザの配偶者は誰もが就労許可を申請できますが、H-4ビザ保持者の場合には、上記の条件を満たす方のみが、就労許可を申請できます。また、EAD取得後のH-4、EまたはL-2ビザ保持者は、雇用者に拘束されないオープン・マーケットでの就労が可能です。日系企業でなければならない、特別なスキルが必要な職でなければならない、特定の分野での学位を取得していなければならない、といった決まりはありません。

以上が既存のルールでしたが、11月22日に出版された政策ガイダンスでは、E・L-2・H-4ビザ保持者の就労に関して、主に2つのルールについて改正されることが発表されました。

E・L-2・H-4ビザ保持者の就労許可は、以下の2つの条件を両方満たす場合に限り、有効な滞在期間内で、就労許可更新申請の結果が出るまで、あるいは現在有効なEADの有効期限が切れてから最長180日、このどちらか短い期間に限り、自動的に更新されます。

  1. E・L-2・H-4ビザ保持者が、現在有効なEADの有効期限が切れる前に更新を申請している。

  2. E・L-2・H-4ビザ保持者の滞在期間(I-94)が有効である。

今回の改正の中でも重要なのが、EとLビザ保持者の配偶者のEADに関する内容です。前述の通り、EとLビザ保持者の配偶者は従来、アメリカでの就労が認められていましたが、就労はビザ・ステータスに付随していないため、入国後に移民局で就労許可申請を行い、就労許可証を取得して初めて就労が可能になります。それが今回の政策ガイダンスでは今後、EとLビザの配偶者の就労はビザ・ステータスに付随しているものとする、従って有効なEまたはL-2ビザ保持者はアメリカ入国後に就労許可を申請することなく自動的に就労が可能になると発表がありました。

この政策は発表日からの施行となりますが、実際には移民局がEまたはLビザ保持者の配偶者について就労可能であることをシステムに反映させる必要があります。移民局は、すぐに実行する旨を公言しているものの、いつまでにといった具体的な日付は発表されていません。

また、就労を開始する際、労働者は合法的に就労できることを証明するためにI-9というフォームの記入を行い、雇用主も、合法的に就労できることを記した書類を確認しますが、現状ではEやL-2ビザ保持者が就労する場合、有効なEADが唯一の証明書類となります。システムのアップデート以降は、EまたはLビザ保持者の配偶者であると記されたI-94が、合法的に就労できる証明になります。

なお、このルールはH-4ビザ保持者には該当しません。よって、今後もH-4ビザ保持者がアメリカで就労するためには、EADが必要となります。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118