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アメリカ国外に生活基盤を移すグリーンカード保持者の選択肢

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき米国移民法について解説します。

*同記事は、ワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得し、カンザス州及びワシントン州において弁護士資格を持ち、K&I Lawyersを琴河利恵弁護士と共に創業した五十畑諭弁護士が、在シアトル日本人の読者に向けて解説しているものです。詳細については、K&I Lawyersなど移民法の専門家へお問い合わせください。また、米国移民局ホームページ(英語)はこちらです。

アメリカ国外に生活基盤を移すグリーンカード保持者の選択肢

グリーンカードを維持するためには、グリーンカード保持者がアメリカに永住する意思を継続して持っていることが条件となります。グリーンカード保持者の中には、年に何度かアメリカに入国して短期間滞在すればグリーンカードを維持できると思っている方が多くいますが、これは誤解です。

このような滞在の仕方では、明確に永住の意思を表すことができません。法律上、年間何日以上アメリカに滞在しなくてはならないという規定はありませんが、長期間アメリカから離れると永住の意思を失ったとみなされ、入国審査の際、グリーンカードを没収されるというケースも少なくありません。

グリーンカード取得後、さまざまな理由で、日本に戻らなければならない状況になることもあります。このような場合、将来的にアメリカに戻って来る意思の有無によって、グリーンカード保持者には、一般的に次のような選択肢があります。

再入国許可証(Reentry Permit)を取得する

再入国許可証の申請でいちばん注意しなければならないのは、アメリカ国外からの申請は受理されないということです。つまり、申請者は、再入国許可証を申請し移民局がそれを受理した日に、アメリカに滞在していなければなりません。また、申請提出後、約1カ月ほどで指紋採取のアポイントメントがスケジュールされますが、この指紋採取もアメリカ国内で行われます。もし、再入国許可証を申請せずに出国してしまった場合は、出国から1年未満であれば、1度アメリカに戻り、再入国許可証を申請することも可能です。

また、再入国許可証は自動的に再入国を認めるものではないので、アメリカ国外で生活している間も、アメリカとの生活の結びつきを失っていないことを証明しなければなりません。アメリカに不動産や財産を所有している、税金申告をしている、アメリカに銀行口座があり、頻繁に取り引きを行っている、アメリカの運転免許証を保持している、 家族がアメリカに居住しているなどが、アメリカとの結びつきを証明できる主な資料・事実と考えられます。それと同時に、日本での滞在目的が一時的である証明も必要です。たとえば、仕事上2、3年、日本に赴任する場合や、家族の介護などです。

再入国許可証の有効期間は発行から基本2年間ですが、状況によっては、1年となる可能性もあります。更新が必要な場合は、更新もアメリカ国外から行うことはできないため、申請者がアメリカに滞在しなければなりません。また、指紋採取も初回申請同様、アメリカ国内にて行われます。

帰化を申請する

再入国許可証を2年ごとに更新することが困難な場合、アメリカに帰化することを選択する方もいます。帰化によって米国市民になると、再入国許可証は必要なく、アメリカから何年離れていても再入国することが許されています。また、帰化申請には、申請時点でのアメリカ滞在日数に関しての厳格な基準があり、それも満たす必要があります。

グリーンカードを放棄する

将来アメリカに戻る意思がない場合には、最寄りのアメリカ大使館・領事館またはアメリカ国外にある移民局の施設(日本の場合、いちばん近いのは韓国・ソウル)でグリーンカードを放棄する手続きを取ることができます。

万一、出国前に再入国許可証を申請し忘れてしまい、さらに出国から1年以上が経過してしまった場合は、 アメリカに再入国する前に、改めてアメリカの親族、または雇用主を通して請願書を提出し、移民ビザの申請をし直すか、米国大使館で帰国居住者として移民ビザを取得する必要があります。後者の場合は、アメリカとの結びつき、また永住の意思を失っていない、アメリカ国外での滞在が不可抗力な理由によるものであったことを証明しなければなりません。

いずれにしても、アメリカを離れる前に、これらの選択肢を検討することが大切です。ただし、上記の選択肢はあくまで一般例であり、それぞれの申請にはここで紹介した以外の申請条件があることにもご留意ください。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118