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「丁寧な暮らし」でエコは実現できたのか〜ゆる〜くSDGsな消費者生活 Vol.24

​SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

わが家には炊飯器がない。が、別にミニマリストというわけではない。炊飯専用土鍋を使用して米を炊いている。

少し前、いわゆる「丁寧な暮らし」的な日本の道具集めにハマっていた。一時帰国のたび合羽橋や築地場外市場に足を運び、鉄の打ち出しフライパンだの、銅の卵焼き器、朴ほおの木のまな板だの買って帰ったものである。ここ3年は日本に帰ることもできず、物を増やさずにいるが、どの道具も大切に使っている。昔ながらの道具の良さは、初期費用は少し高くともシンプルなので長く使えること。その意味でエコなんじゃないかと思う。

新たに手に入れたのはコーヒー器具でおなじみハリオのフタがガラスのご飯釜三合炊き$9250沸騰すると蒸気穴のホイッスルが鳴ってお知らせいつの間にかハリオUSAの公式ウェブサイトができていてオンライン購入が可能になっていたこれはうれしい驚き ちなみにアマゾンでも買える

さて、土鍋を入手したのは、意外にも日本ではない。6年前、ニューヨークの和包丁専門店でアルバイトをしており、そこで扱いがあり購入した。「鍋で炊飯なんて難しそう」というイメージがあったが、その萬ばんこやき古焼の「菊花ごはん土鍋」は、とにかく便利。通常通り20分ほど吸水させた米を入れ、水位目盛りに沿って水量を調節し、火にかける。10分程度で蒸気口から湯気が吹き出したら沸騰の合図。火を止めてそのまま20分放置するだけで、キラキラの白飯に仕上がる。

見よこの米粒の輝きを ところでサステナブル炊飯で調べたところ米選びも実は重要な要素らしいこれはまた詳しく調べる必要がありそうだ

その手軽さと炊きたてのお米のおいしさを実感していたので、お客さんにも勧めまくっていた(笑)。電気機器ではない土鍋は、きっと壊れづらいから長く使えるはず、万が一壊れてもプラスチックではなく自然の素材だから土に還るはず……エコ! と思い込んで使用していた。しかし、「丁寧な暮らし」にハマりながら全く丁寧な所作ができない粗そこつもの忽者の私。1年だか2年だか使用した後、まず蓋を割ってしまい、蓋だけ買い替えることに。さらに数年後、鍋つかみをせずに中蓋を持ち上げ、あまりの熱さに落とし、本体の取手に激突させた。パリン……。それでも使い続けてきたが、ここに来て本体もかなり劣化が目立つようになった。

そこで、はたと気が付いた。このペースの買い替えでは、むしろ電気炊飯器より環境に悪いのではないか、と。しかも土に還るどころか、縄文土器だっていまだにその辺の畑から破片が出てくるほど、陶器って強い。土鍋での炊飯は果たして本当にエコなのか?

わが家は電気調理なので、一般的な「土鍋は直火、炊飯器は電気」という電力消費の比較はできないが、稼働時間を考えると「ほんのり」くらいは抑えられていると信じたい。電気炊飯器の寿命は通常3~6年、最長でも10年だそう。一方で土鍋は10年でも20年でも……もちろん大切に使えばの話。次はせめて10年は保たせたいものである。

■HARIO
www.hario-usa.com
日本が誇る、創業1921年の老舗耐熱ガラス機器メーカー。理化学製品の製造販売から始まり、その技術を生かしたサイフォンなどのコーヒー用品が高い評価を得ている。特にコーヒードリッパーのV60は、世界中のバリスタが支持する優れもの。ガラスのアクセサリー・ライン「HARIOランプワーク・ファクトリー」の素朴で繊細に作り込まれたピアスやネックレスもおすすめだ。

■銀峯陶器
https://ginpo.co.jp
1932年創業の萬古焼土鍋の大手メーカー。白とグレーのグラデーションに、花文様の花三島シリーズは、一度は目にしたことがあるのでは。筆者が愛用していた菊花ごはん土鍋は、火加減不要、中蓋付きで吹きこぼれなし、という使いやすさに加え、上蓋の色を粉引、飴、瑠璃の3種類から選べるのも魅力。サイズも2合、3合、5合炊きと取りそろう。アマゾン・ジャパンで米国への配送にも対応する。

■光琳
www.korin.com
和包丁、和食器、業務用和調理器具などを広く取り扱い、ニューヨーク、マンハッタンのショールームには世界中から著名シェフが足を運ぶ。まだアメリカで和食が珍しかった 1982 年、ウエートレスとして働いていた川野作織さんが、本物の日本文化を広めたいと和食器の行商をしたのが始まり。銀峯陶器の花三島シリーズの土鍋を含め、さまざまな和調理器具がオンラインで購入でき、包丁の研ぎ直しサービスは郵送でも受け付けている。

■TOIRO
https://toirokitchen.com
アメリカで買える土鍋を、といろいろ調べていて発見した、ロサンゼルスにショールームを持つ土鍋専門店。ワイン講師だった武井モア奈緒子さんが、伊賀焼土鍋を自作ウェブサイトでオンライン販売し始めたのがきっかけだそう。オンライン・ショップには、長谷園の炊飯用伊賀焼土鍋「かまどさん」を始め、美濃焼の窯元である深山の和食器など、日本の名品がずらりと並び、見始めると止まらない。ギフト選びにも重宝しそう。

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。