2024年も再び!
セレブレート・アジア
取材・文:リー・ジャニス
写真:シアトル・シンフォニー提供
今年で16回目となるシアトル・シンフォニーによるコンサート「セレブレート・アジア」が、ベナロヤ・ホールにて1月 28日(日)に開催されました。
タイトル通り、旧正月の時期に合わせてアジア系コミュニティーを祝う一大イベント。クラシック演奏だけでなく、アジアの伝統芸能のパフォーマンスも披露される、お祭りのようなプログラムとなっている。
▲アンサンブルと絶え間なくアイコンタクトをする指揮者のサニー・シャーさん
日本を始め、中国、韓国、ベトナムなど、観客席には華やかな伝統衣装も目立つ。ステージに司会者が登場すると、そうしたアジアゆかりの衣装やアクセサリーを身に着けている観客たちをたたえ、会場を沸かせた。中でも、作曲家のオーガスト・ベックさんは、韓国の伝統衣装である青のパジチョゴリに身を包み、ひと際目立つ存在だった。
▲ピアニストのクィン・グエンさんの横に立つ、作曲家のポール・チハラさん
▲コンサート後には、ちきり&太鼓の学校による和太鼓のパフォーマンスが。シンクロした動きがお見事
コンサートは、そのオーガストさんが作曲した「チュソク・オーバーチュア」で幕を開けた。オーガストさんは、現在18歳。チュソクとは韓国の伝統行事で、アメリカでいう感謝祭に当たり、家族のことを考えて作った思い出深い曲だと言う。続く「コンチェルト・ファンタジー・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ」は、ポール・チハラさんが、今回演奏するピアニストのクィン・グエンさんのために書いた曲で、ふたりの深い友情が伝わってくる。クィンさんは楽譜を見ることもなく、全身を躍動させながら情熱的に鍵盤をたたく。完璧に連携するサニー・シャーさんの正確な指揮も相まって、素晴らしい演奏に圧倒された。
休憩後は、ベートーベンの「レオノーレ序曲第3番」で再び観客を引き込み、グリーグの「ペール・ギュント第1組曲 作品46」で締めくくられた。なかなかやまない拍手が、観客たちの満足度を物語っていた。
作曲家 オーガスト・ベックさん
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イクラが大好物で、エドモンズにある山海の寿司がお気に入りです。小津安二郎の「晩春」と「お早う」など、日本映画もよく観ています。
今回、自分の作品が演奏されたことは身に余る光栄です。シアトル・シンフォニーの「ザ・ヤング・コンポーザーズ・ワークショップ」で作曲する際、「感謝」を表すのに思い浮かんだのがチュソクでした。
最初に音楽に触れたのは、6歳の時。鈴木メソッド式でピアノ・レッスンを受け、作曲に関心を抱くようになりました。シアトル・シンフォニーを聴いて育ったので、このオーケストラは私にとって「スーパーヒーロー」です。
音楽家になるのは簡単ではありません。でも、情熱と愛情を持って取り組んでいることを示せば、道筋が自ずと整っていきます。音楽家を目指す子どもたちには、夢をかなえるためにも、常に周りへの感謝の心を忘れないでほしいですね。
指揮者 サニー・シャーさん
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私も同じく6歳の時にバイオリンに出合い、オーストラリアのシドニーで音楽教育を重ねました。オーストラリアン・ストリングス・アカデミーでのオーケストラ初演奏後はシンフォニーに引かれ、指揮者を志すようになりました。 今回はシアトルゆかりのアジア系作曲家であるオーガスト、ポールのふたりを迎えられて、大変うれしい思いです。ライブ・ミュージックは対話のようなもので、お互いを尊重し、理解することが必要。音楽を通して、このアジア系コミュニティーに対話をもたらし、多様性を広げられることに意義を感じています。
www.seattlesymphony.org