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Thunderbolts*原題は公開後に『*The New Avengers』に改題/(邦題『サンダーボルツ*』)

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アクションでは解決できない混沌の時代


Thunderbolts*原題は公開後に『*The New Avengers』に改題/(邦題『サンダーボルツ*』)

スーパーヒーロー(以下SH)が大量に登場して大ヒットを重ねてきた『マーベル・シネマティック・ユニバース』(MCU)シリーズの最新作。2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』の続編にあたり、主要メンバーだったアイアンマンやブラック・ウィドウが命を落とし、ほかのSHたちも引退や離脱により第一線から姿を消した後の世界を描く。『アベンジャーズ』だけで4作、MCUシリーズ全体ではなんと40作近く制作されている長大なシリーズ。正直すべては観ていないし、観た作品のストーリーをはっきり覚えているわけでもない。だが、落ちこぼれや悪役キャラが結集した本作は際立っており、これまで観たMCU作品の中でもダントツに面白かった。

物語は英雄的な死を遂げたブラック・ウィドウの義妹エレーナ(フローレンス・ピュー)が自殺を図ろうと高層ビルから飛び降りるシーンから始まる。CIA長官ヴァル(ジュリア・ルイス・ドレイファス)の指揮下で暗殺や破壊といった裏仕事を請け負わされていた彼女は、虚無と孤独に支配される日々に、SHとして表舞台で活動したいと申し出る。するとヴァルは最後の任務として、辺境にある研究施設に潜む工作員の排除を命じる。現地に赴いたエレーナはゴースト(ハナ・ジョン・カーメン)、2代目キャプテン・アメリカ、現U.S.エージェント(ワイアット・ラッセル)、そしてタスクマスター(オルガ・キュリレンコ)と遭遇。激しい交戦へと発展する。だがやがて、それぞれがヴァルによって別々の人物を抹殺するように指示されていたことが明らかになり、この任務がヴァルの罠であることに気づく。そこへ、病院服を着た青年ボブ(ルイス・プルマン)が現れ、彼女らは困惑しながらも彼とともに施設からの脱出を図るのだった。

敵は強大で明快だが、SH同士の個性が強すぎて折り合いに時間がかかる、というのが本シリーズのお家芸。本作でもエレーナらをヴァルの手先とみなして追撃するウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)が登場。さらに娘のエレーナかわいさに助っ人で現れる義父レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)までがからんで、追いつ追われつのドタバタ風アクションが展開される。酒浸りの中年男レッド・ガーディアンが自分たちは悪と戦う「サンダーボルツ」だと宣言するのだが、エレーナは義父への不信感が強く、ほかのメンバーたちもそれぞれに屈託を抱えていて、チームとしてまったくまとまらない。ところが、ついに謎の青年ボブの正体があらわになると、否応もなくエレーナらは力を合わせざるえなくなっていく。

アクション重視の本シリーズ。エレーナを演じるフローレンス・ピューは冒頭のビルからの転落シーンをスタントなしで演じ、トム・クルーズばりの役者魂を見せている。しかも本作ではロシアで暗殺者として育てられたエレーナの内面が物語を牽引する。これはピューのボールドな魅力と優れた演技力に追うところが大きい。またエレーナが、悪玉ヴァルの手先となったボブの特殊能力を逆手にとり、彼の空疎な心に入り込み、自分自身を重ねていく過程は、敵か味方かでは割り切れない、アクションでは解決できない混沌の時代を鮮やかに描き出しており卓越していた。エンディグは勝利ともハッピーとも無縁。これもまた本シリーズの特徴だ。その上、今回は公開後に大きなサプライズ。タイトルを『サンダーボルツ*』から『*ザ・ニュー・アベンジャーズ』へと、「ニュー・アベンジャーズ」の誕生が正式に発表されたのだ。

Thunderbolts*原題は公開後に『*The New Avengers』に改題/(邦題『サンダーボルツ*』)

写真クレジット:Walt Disney Studios Motion Pictures
上映時間:2時間6分シアトル周辺ではシネコンなどで、標準、3D、4DX、IMAX等にて上映中。

 

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。