Home 観光・エンタメ シニアがなんだ!カナダで再出発 カナダ人はナイス?

カナダ人はナイス?

カナダ人はナイス?

岩手県釜石市で道路の土砂を片付けるなどしてボランティア活動を行うカナダ代表のラグビー選手たち2019年10月16日付バンクバンサン紙

秋に大型台風が日本を襲ったのと同時期に日本中を興奮の渦に巻き込んだラグビーワールドカップ。参加中のカナダ代表選手たちが、台風で中止になった試合の代わりに被災地の掃除を手伝った。「突然現れた屈強な助っ人に、住民からは感謝の声が寄せられた」と『朝日新聞』は報じている。このニュースは当地でも流れ、日本出身でカナダに移住した私にはうれしいものだった。

2019年10月カナダ連邦下院議会選挙が行われトルドー首相率いる与党自由党が157議席を獲得して第1党となり単独過半数には至らずとも政権を維持2019年10月22日付ザプロヴィンス紙

1847年に主食のジャガイモが飢饉となり、アイルランドから逃れて多くの人がトロントに移住した時、カナダ人は諸手を挙げて受け入れた。9・11の米国テロの際も、ニューファンドランド島に緊急着陸した米国行きの飛行機の乗客を地元民が自宅に泊まらせ、世話をした。最近ではシリアからの難民を世界で最も多く受け入れており、ジャスティン・トルドー首相自ら歓迎したテレビ映像が世界中に流れるなど、「カナダ人はナイス」というイメージが定着しつつある。

バンクーバー市内では本選挙日の10日前から4日間にわたって期日前投票が可能となった

カナダ人に対する個人的考察を述べてみたい。幼い頃から当地で育った人は他人へのマナーが良く、道や店でぶつかりそうになるだけですぐ「ソーリー」と言うし、話し相手と意見が違っても強く反撃されることはまれ。先日、家の近くで2台の車が接触事故を起こしたが、20〜30歳代と思われる運転手2人は言い争うことなしに淡々とお互いの情報を交換していて、清々しささえ覚えた。

移民数を極端に減らすことを公約とした超右派のカナダ人民党は全敗スキャンダルがあったにもかかわらず多文化主義を掲げる自由党が勝利した右派台頭の世の中であってもやはりカナダ人はナイスと胸をなでおろした

一方、この「カナダ人はナイス」という広く知られたイメージの裏側を分析する意見もある。カナダの日刊紙『ザ・スター』の記事で、中国からトロントに留学中のある大学院生は、「都会に住むカナダ人は表面的にはナイスだが、微笑みと親切な言葉の奥に、他人に対しての無関心と距離を置きたがる性格を隠している。常に自己のイメージや評判を守ろうと受動的攻撃行動(Passive Aggressive Behavior)を取る傾向にあり、米国人と英国人の中間的な性格」と言う。

この秋東京に住む古い友人たちが訪ねてくれノースショアのディープコーブなどを案内した自然あふれるバンクーバーで客人をもてなすのは楽

そう言えば、自分もカナダに移って6年経ったが、常に交流がある友人はほとんどがアジア系1世の移民。23歳で日本を出て、50年近く欧、米、加と移り住んだ自分は、いわゆる欧米社会のことを少しはわかっているつもりだ。しかし、パーティーなどで周りが全て英語を自国語とするカナダ人たちに接する時は、あいさつや日本の話題が終わると、話が途切れがちになってしまう。俗語をふんだんに使い、ジョークも入れて話すネイティブの言葉の背景が、即座に理解できないことも原因だと思う。逆にアジア系移民とはより互いのことがわかる気がする。

バンクーバー中心の東端に位置し北米でも大規模な中華街バンクーバーの南隣には新たな中華街としてリッチモンドが急成長を遂げ人口の半数が中華系と言われる

多文化主義のカナダに移住した自分は、「人はどうあれ、自分は自分がベストと思う自分の理想を目指して生きていく」と言う古い友人の名言を実践するよう心がけているこの頃である。

滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。