今や誰もが知る「SDGs(持続可能な開発目標)」。この目標の達成を目指して経営する企業が、世界にはたくさんあります。もしかしたら、あなたが実践者になる日が来るかも? 意外と知られていない、身近にあるSDGs経営を紹介します。
第8回日本の技術でエネルギーを革新
「京都フュージョニアリング」
京都大学発のディープテック・スタートアップでありながら、シアトルに米国拠点を構える京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering Ltd.)は、核融合産業における「つるはしとシャベル」の提供者として、その実装力で世界的な存在感を高めています。SDGsでは主に目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、そして目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献しています。 共同創業者の小西哲之氏らは、日本の卓越した核融合工学とシアトルを中心とする活発なスタートアップ・エコシステムを橋渡ししてきました。同社は核融合を「究極的なエネルギーソリューション」として位置づけ、研究開発と産業化の両面で実現を進めています。技術の透明性と信頼性を重視し、世界中の核融合開発企業に対して、不可欠なハードウェアとエンジニアリングを提供しています。
技術:科学を産業へ変える「実装力」
同社では、特定の核融合方式(炉の形状など)に依存せず、すべての核融合開発者が共通して必要とする「ジャイロトロンシステム(核融合炉を加熱する装置)」や「フュージョン燃料サイクルシステム(核融合燃料を供給・回収する仕組み)」といった基幹装置を提供しています。これまで研究室の中にとどまっていた科学技術を、産業レベルの製品へと昇華させることで、開発企業の成功確率とスピードを上げています。このアプローチは、核融合発電という人類未踏のプロジェクトにおいて、個別の企業競争を超えた「産業全体の底上げ」を実現するものです。日本の精密なものづくり技術が、世界のエネルギー問題の解決へと再投資される好循環を見据え、技術移転とサプライチェーン構築に取り組んでいます。
地域:イノベーションと雇用のハブ・シアトル
シアトルのダウンタウンに米国グループ会社(Kyoto Fusioneering America Ltd.)を構え、現地のエンジニアやビジネス人材の雇用を生み、日米混合チームによる現場力とキャリア形成を後押ししています。シアトルにはヘリオン・エナジー(Helion Energy)やザップ・エナジー(Zap Energy)など世界有数の核融合企業が集積しており、同社はこのエコシステムの中で「技術の架け橋」として機能しています。地元の技術イベント「シアトル・フュージョン・ウィーク(Seattle Fusion Week)」などでは主要な役割を果たし、クリーンテック・コミュニティーとの対話を深めています。こうした活動は、日本企業への信頼を高めるだけでなく、シアトルが世界の脱炭素技術の主要都市として成長するための包摂的な基盤を支えています。
環境:脱炭素の「最後の切り札」を設計する
エネルギー生産の視点では、運転時にCO2を排出せず、長期にわたって残る高レベル放射性廃棄物をほとんど出さない核融合発電の実用化を、エンジニアリングの力で加速させています。化石燃料に依存しないベースロード電源の確立は、気候変動対策における有力な選択肢となり得ます。
また、開発プロセスにおいても、既存の産業技術を転用・応用することで無駄な開発リソースを削減し、効率的なシステム設計を徹底しています。米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)の国立研究所との共同研究プログラム「INFUSE(Innovation Network for Fusion Energy)」に複数回採択されている事実は、同社の技術が環境負荷低減とエネルギー安全保障の両面で、国際的に重要な役割を担い得ることを示しています。
経営:国境を超えたパートナーシップ
経営面では、単独での成功ではなく「グローバルな協調」を戦略の核に据えています。米国CIAに関連する戦略投資機関インキュテル(In-Q-Tel)からの出資受け入れや、英国原子力公社(UK Atomic Energy Authority:UKAEA)との協業など、国境や官民の枠を超えたパートナーシップを構築しています。Bコープ(B Corp)のような認証制度とは異なりますが、同社は「いつまでに、どのような技術課題を解決するか」というロードマップ(KPI)を明確化し、日米の政府機関や投資家に対して高い透明性を打ち出しています。こうしたオープンな姿勢は、核融合という巨大な課題に対し、世界中の利害関係者が進捗を共有し、産業化を加速させる共通言語として機能しています。
京都フュージョニアリングは、日本の実験室で磨かれた技術と、シアトルの野心的なエネルギー市場を近づけ、地球規模の課題解決を強くしなやかにしています。 一見、遠い未来の話に思える核融合ですが、確かな技術と意図あるパートナーシップ、そして行動を促す資金循環がそろえば、SDGsは確実に根付いていきます。一企業の挑戦であっても、国を超えて連携し改善していく意思があれば、世界のエネルギー構造は変革できるでしょう。 社会を一歩前進させるのは、SDGs経営に取り組む企業のちょっとした工夫を知った、あなたの一歩です。Kyoto Fusioneering. (n.d.). Our Mission & Technology.
https://kyotofusioneering.com/
Kyoto Fusioneering. (2023, August 2). Kyoto Fusioneering America Secures Three INFUSE Awards from the U.S. Department of Energy.
https://kyotofusioneering.com/en/news/2023/08/02/1670
Kyoto Fusioneering. (2024, July 23). Kyoto Fusioneering Closes 2nd Round of 1.1 Billion Yen Series C Extension Led by In-Q-Tel (IQT), Marubeni and Nichicon.
https://kyotofusioneering.com/en/news/2024/07/23/2533
GeekWire. (2024, July 23). CIA investment arm helps fund a Japanese fusion startup with U.S. HQ in Seattle.
https://www.geekwire.com/2024/cia-investment-arm-helps-fund-a-japanese-fusion-startup-with-u-s-hq-in-seattle/
Helion Energy. (2023, May 10). Helion announces world’s first fusion energy purchase agreement with Microsoft.
https://www.helionenergy.com/articles/helion-announces-worlds-first-fusion-ppa-with-microsoft/


















