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第10回 2030SDGsカードゲームが企業の対話を変える〜発掘!あなたの身近にあるSDGs経営

今や誰もが知る「SDGs(持続可能な開発目標)」。この目標の達成を目指して経営する企業が、世界にはたくさんあります。もしかしたら、あなたが実践者になる日が来るかも? 意外と知られていない、身近にあるSDGs経営を紹介します。

第10回
2030SDGsカードゲームが企業の対話を変える

SDGsを「知っている」で終わらせず、実際の行動や意思決定につなげていく手法として活用が広がっているのが、日本発の「2030SDGsカードゲーム」です。2019年にはニューヨークの国連本部でも実施されたほか、9カ国語に翻訳され、世界各国で延べ40万人超が体験したとされています。楽しさと対話を入り口に、SDGsを自分ごととして捉え直すこの取り組みは、組織の見え方や仕事の意味を問い直すきっかけにもなっています。

SDGsを知っているだけでは終わらせない

HARI「2030SDGsカードゲーム」は、「なぜSDGsが必要なのか」「それによってどんな変化や可能性が生まれるのか」を、体験を通じて理解するために作られたプログラムです。参加者は、それぞれ異なる価値観や目標を持つ立場となり、限られた時間や資源を使って行動します。そうして重ねた選択は、自分の成果だけでなく、世界全体の「経済」「環境」「社会」の状態にも影響を及ぼしていきます。自分にとって合理的な判断が、必ずしも社会全体にとって望ましい未来につながるとは限りません。その構造を可視化する点に、このゲームの大きな特徴があります。SDGsが17の目標を相互に結びついた「不可分」のものとして位置づけていることを踏まえると、この体験はまさにSDGs経営の入り口だと言えるでしょう。

このゲームが企業研修として広がっている理由も、そこにあります。公式案内では、SDGsは社員にとって「新たにやらねばならないこと」と受け取られがちで、その「やらされ感」のままでは推進が難しいと説明されています。だからこそ、楽しさを入り口にしながら対話を促し、他人事だったテーマを「自分ごと」として捉え直す設計が重視されています。ゲームを通して、組織の意思決定の癖やメンバーの思考、行動の傾向が見えてくることもあります。

進めていくプロジェクトのカード

導入事例にも、その特徴が表れています。耐熱ガラスメーカー「HARIO」では、自社がすでにどの目標に貢献しているのかを探る契機として活用。世界最大級の消費財メーカー「ユニリーバ・ジャパン」では、社員がSDGsを知っている状態から、実務と関連づけて捉えられる状態へ進むことを重視し、導入しています。参加者の声として「自社の利益だけでなく世界の状況に目を向ける必要を感じた」「他社や他チームとの共同・連携が大切だと感じた」といった反応が紹介されています。

SDGs経営というと、新しい社会貢献活動を始めることだと受け止められがちです。しかし本質は、商品開発、採用、営業、調達、広報といった既存の経営判断が、社会や環境、そして未来の持続可能性とどう結び付いているかを見直すことにあります。2030SDGsカードゲームは、そのつながりを知識として学ぶだけでなく、体験として腹落ちさせる装置です。だからこそ、研修の場を超え、組織の意思決定の質そのものに問いを投げかける力を持っています。

SDGsへの貢献

プロジェクトを進めるためのお金と時間のカード

このカードゲームはSDGs全体のつながりを理解するためのものですが、とりわけ重なりが大きいのは、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標12「つくる責任 つかう責任」、そして目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」だと考えられます。まずは楽しみながら学び、対話を通じて理解を深める点は、質の高い学びや生涯学習の文脈と親和性があります。次に、自分たちの選択が資源、環境、社会にどう影響するかを考える構造は、持続可能な生産と消費の考え方に通じています。そして、個別最適ではなく、他者との連携によってより良い世界を目指す体験は、パートナーシップの重要性を示しています。

SDGsへの私たちの一歩

2030SDGsカードゲームの価値は、ゲームそのものにあるのではありません。大切なのは、その体験を通して「自分の仕事は社会と無関係ではない」と気づけることです。SDGsを遠い理想やきれいごととして眺めるのではなく、自分の所属する会社、自分が日々下している判断、自分が誰と協力し、何を優先しているかを見つめ直す。そこから初めて、SDGs経営は現実のものになります。社会を一歩前進させるのは、SDGs経営に取り組む企業のちょっとした工夫を知った、あなたの一歩です。


参考文献

▪️United Nations. Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development.
https://sdgs.un.org/2030agenda

▪️一般社団法人イマココラボ「カードゲーム2030 SDGs」「カードゲーム『2030SDGs』の紹介」
https://imacocollabo.or.jp

▪️公益財団法人日本生産性本部「SDGs導入支援プログラム『2030 SDGsカードゲーム』研修」
www.jpc-net.jp/seminar/inhouse/detail/006429.html

▪️一般社団法人イマココラボ 企業導入事例(HARIO、ユニリーバ・ジャパン)
https://imacocollabo.or.jp

 

 

中島雅紘
法学と国際関係学の学位を持ち、マネジメントと社会開発において豊富な実績がある。組織変革を主導し、診療所設立やスタートアップへの貢献、また、NPOの設立やボランティア活動を通じてコミュニティの幸福向上に尽力し、社会革新を推進している。 つくば学園ローターアクトクラブ2025年度幹事 シアトルロータリークラブ会員 WA show it LLC 創設代表 masa.nakashima@maripiyo.com