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2023年、電気自動車(EV)について考える〜ゆる〜くSDG’sな消費者生活Vol.22

​SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

昨年末、知人が日本へ本帰国することになり、愛用のワーゲン・トランスポーターを手放すことを決めた。カスタム仕様の真っ赤な愛らしいそのワゴンには思い入れが深く、持っていくべきかと悩んでいたが「どうせなら、そろそろハイブリッドかEVに乗りたい」と言っていた。ワシントン州は、2030年以降全ての乗用車の新車販売・車両登録をEVとする目標を策定した。ガソリン価格高騰の折、周囲でもEVに乗り換える人が増えてきている。これはそろそろ本腰を入れて、EVについて知る必要がありそうだ。

公共交通機関も続々とEV 移行する中、「環境に良いはず」と漠然と考えていたが、いざ調べてみると、それほど単純ではないことがわかる。EVは、バッテリーに貯めた電気でモーターを回して車を走らせるため、環境汚染物質を多量に含む排気ガスを出さないという意味では確かにエコカーだ。ところが、その電気がどう作られるのかが重要な問題らしい。米国の電力供給は一般的に、化石燃料を使う発電と、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーによる発電が混在している。現在販売中のEVの大半は、従来のガソリン車よりも二酸化炭素排出量は少ないとされているが、もし石炭を大量に使った発電による電気で充電された場合、最新のハイブリッド車よりも環境に悪影響を及ぼす可能性があるのだ。

また、バッテリーであるリチウムイオン電池の生産自体も、コバルトなどのレアメタルを使用することで、その採掘・製錬における環境汚染や鉱山労働者の労働環境など、さまざまな問題をはらんでいる。さらに、リチウムイオン電池の寿命は5年ほどだが、その推定リサイクル率は現在の米国でおよそ5%でしかない。そのまま廃棄されれば深刻な環境汚染に直結する物質を多く含んでいるというから大変だ。

え、じゃあどうすれば? とはいえ、近年の米国では多くの石炭火力発電所が閉鎖され、風力や太陽光による発電に移行中。徐々にクリーンになりつつあるのはうれしい話だ。リサイクルの問題も、これから技術革新が進めば解決できる可能性も出てくるそう。つまり、EVが本当に環境に優しくなれるかは今後の技術の進歩にかかっている。

Mr.ビーン」が大ブームになった頃に思春期を送った私には、主人公のシグネチャーであるMINIクーパー(当時はまだローバーミニ)に執念深いほどの憧れがある。そのMINIも、2025 年を最後に完全 EVブランド化するらしい。さて、目標は2030年。憧れのヨーロピアンEVに乗るお財布と心の準備は整っているだろうか。

ガソリンモデルのクラシックMINIをEVに改造するMINIリチャージドアップサイクルプロジェクトが昨年発表昔ながらのMINIをよりサステナブルに乗り続けるための試みでファッション界の巨匠ポールスミス氏による1998MINIポールスミスエディションもEVとして生まれ変わった©BMW AG Munich Germany
懐かしのワーゲンバスも電気自動車​​IDBuzzとして復活しヨーロッパではすでに販売されている北米での発売は2024 年予定だそうああかわいい​

 

■「電気自動車は本当にエコか 電気からバッテリーまで、あらゆる面からチェックした」
https://globe.asahi.com/article/14329785
『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載された記事の日本語版。専門家らが調査したデータを基に、ガソリン車と比較し、詳細な数字を交えながらEV の知られざる環境負荷について問う。

■次世代自動車基礎知識
www.cev-pc.or.jp/kiso
次世代自動車の歴史や用語がわかりやすくまとめられている。たとえば、ゼロエミッション車(ZEV)とは? 走行時、二酸化炭素などを排出しないクリーンな車両のことで、EVや燃料電池自動車(FCV)などを指す。ただし、現時点では EV 製造時の二酸化炭素量は実はガソリン車を上回っている(ボルボ・カーズ 2021 年発表)という事実も重要なポイント。

■再生可能エネルギーとは
www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable
太陽光、風力、水力、地熱など自然環境を生かし、永続的に利用できるエネルギーを電源とするものが、再生可能エネルギーと呼ばれる。国際エネルギー機関(IEA)の 2021 年発表では、発電電力に占める再生可能エネルギーの割合は、米国で21%、日本で 22%だ。

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。