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第4回 美しさの裏側にある闇:ブラッドダイヤモンド問題と、キンバリープロセスの役割〜発掘!あなたの身近にあるSDG’S経営

今や誰もが知る「SDGs(持続可能な開発目標)」。この目標の達成を目指して経営する企業が、世界にはたくさんあります。もしかしたら、あなたが実践者になる日が来るかも? 意外と知られていない、身近にあるSDGs経営を紹介します。

美しさの裏側にある闇:ブラッドダイヤモンド問題と、キンバリープロセスの役割

ダイヤモンドは美しく輝く宝石として愛されていますが、その裏側には「ブラッドダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)」と呼ばれる問題があります。これは、紛争地域で違法に採掘されたダイヤモンドが武装勢力の資金源となり、内戦や暴力を助長しているという深刻な課題です。このような取引は人々の安全や生活を脅かすだけではなく、労働環境の悪化や環境破壊にもつながっており、倫理的な観点から国際的な批判を集めています。こうした状況に対応するため、2003年に国連主導で「キンバリープロセス証明制度」が導入されました。

キンバリープロセス証明制度とは?

キンバリープロセス証明制度は、ダイヤモンド原石の輸出入に際して、参加国の政府が「紛争と無関係であること」を証明する書類を発行する仕組みです。証明書を取得するためには、インボイスに「紛争と無関係であること」を示す文言を記載する必要があります。輸出時にはこの証明書の提出が義務づけられており、違法に採掘されたダイヤモンドの流通を防ぐことを目的としています。シエラレオネ、アンゴラ、リベリア、コンゴ民主共和国、コートジボワールなど、過去に紛争ダイヤモンドの被害を受けた国々では、この制度の導入によって大きな進展が見られました。現在では世界で流通しているダイヤモンドのほぼすべてがキンバリープロセスを経た「コンフリクトフリー・ダイヤモンド」とされています。国連もこの取り組みを支持しており、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」の実現に貢献する制度と位置づけています。

日本とシアトルの取り組み

日本の経済産業省が「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づき、ダイヤモンド原石の輸出入管理を行っています。タサキ、ギンザタナカ、ミキモトなど日本の宝飾ブランドも、倫理的な調達を重視し、信頼性の高い製品の提供に努めています。

一方、アメリカでも違法なダイヤモンドの取引は禁止されており、シアトルを拠点としたシアトル・ダイヤモンズや、ブルーナイル、ベンブリッジなどの企業がコンフリクトフリー・ダイヤモンド提供に力を入れています。これらの取り組みは、地域経済と倫理的ビジネスの両立を目指す動きとして広がっています。

消費者としての選択

ダイヤモンドを購入する際、私たち消費者にもできることがあります。購入前に証明書や保証書を確認し「キンバリープロセス認証済み」のダイヤモンドであるかを見極めることです。こうした選択は武装勢力への資金供給を断ち、平和構築への一助となるのです。実際に、筆者もプロポーズの際にはアントワープ・ブリリアントでコンフリクトフリー・ダイヤモンドの指輪を購入し、認証書を添えてパートナーに渡しました。

SDGsへの私たちの一歩
キンバリープロセス証明制度は、ブラッドダイヤモンド問題に対する国際的な対策として大きな役割を果たしています。労働搾取や環境破壊といった課題は依然として残されていますが、違法なダイヤモンド流通を抑制し、平和で公正な社会の構築に貢献しています。日本やシアトルにおける政府・企業・市民の取り組みを通じて、私たち一人ひとりが倫理的な選択を行うことが、社会全体を動かす力となります。社会を一歩前進させるのは、SDGs経営に取り組む企業のちょっとした工夫を知った、あなたの一歩です。

 

中島雅紘
法学と国際関係の学位を持ち、ヘルスケアマネジメントと社会開発において豊富な実績がある。組織変革を主導し、クリニックの設立やヘルスケアITスタートアップへの貢献。また、NPOの設立やボランティア活動を通じてコミュニティの幸福向上に尽力し、社会革新を推進している。つくば学園ローターアクトクラブ(2820地区)2024-25年度会長 ☎︎ (206)327-7720(US)、+81(80)1787-1052(JP)