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母の日〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第42回 母の日

5月の第二日曜日は母の日である。私は6歳で母が他界してしまったので、あまりいい思い出がなかった。

日本の母の日は、自分のおかあさんに「いつも面倒を見てくれて、ありがとう!」というメッセージをカードか、赤いカーネーションをあげて「無事、母の日修了」という事になる。アメリカでは、自分の母だけでなく、一般のおかあさんに「ハッピー・マザースデイ!」ということで、教会でも赤いバラの花を一輪もらったこともあるし、子連れで外出して知らない人からも「ハッピー・マザースデイ!」と言われた。

私の通っていた日本の小学校では、母の日にクラスで赤いカーネーションをもらい、翌年は母がいなかったので、私だけ白いカーネーションになった。校門まで歩く間他の生徒に見られ、その後電車で乗り換えながら家に持って帰った。周りからなんとなく見られている感じがして、翌年からはそれが嫌で、校門を出る前に大きなゴミ箱の辺りで、踏みつけてめちゃめちゃにしたのを覚えている。カーネーションは、花びらがまとまっている額の所が異常に硬くしっかりしていて、7歳の子どもには簡単に崩すことができない。制服の革靴のかかとで、蹴って、擦って、つぶして、、、と試したがなかなか壊れない。だからカーネーションをくれるんだ、などと年々思えるようになったわけだ。ある年、それがいきなりなくなった。多分、先生か掃除のおばさんにあの行動を見られていたのかもしれない。

私の子供たちが通っていたアメリカの小学校では、クーポン券を手描きで作り、母親にカードと一緒に渡すのが流行っていた。長男は、マッサージの券。肩もみをしてくれる。10枚くらい束になっていて、一回に1分間とか。私も小さいころ、祖父の肩たたきをして1セッション10円もらっていたなぁ。断捨離をしていたら長女のクーポンが出てきた。朝ご飯を作ってくれるとのこと。果たして実際使ったかは覚えていないが、私の気持ちを書き留めたものがあった。

「朝ごはん むすめが作るこんだては 苺の味と 母の日の色」あれ以来、私は母の日に「私に命を、ありがとう!」と仏壇の亡き母の写真に微笑んでいる。

カトリックの小学校で信者でない私に白いカーネーションをくれたのは、もしかして、仏壇に飾れるように、と言う配慮だったのかもしれない、などと最近思う

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。