小児科医が臨床経験と知見をもとに、子育て中の皆さんの不安や迷いに寄り添う情報をお届けします。
第2回
夏本番、知っておきたい水辺の危険と安全対策
いよいよ夏が始まり、川や海、プールなどで遊ぶ機会が増えてきます。こうした場所にはたくさんの危険が潜んでいます。特に5月から8月にかけては水難事故が多く、1歳から4歳の子どもの死因の中では溺死が大きな割合を占めているのです。では、どのようにすれば子どもたちの安全を守ることができるのでしょうか?
皆さんは溺れている人をイメージするとき、沖に流されバタバタと手足を動かしながら水しぶきを上げて助けを求めているような姿を想像するかもしれません。しかし、実際の溺水はそれとは大きく異なります。多くの場合、声を上げることもできず、激しい動きも見られません。静かに、そしてほんのわずかな時間で起こりうるのです。その特徴を、いくつかのポイントに分けて見ていきましょう。
1. どんな浅瀬でも溺れる
まさかと思うかもしれませんが、溺水はたった3センチほどの水たまりでも起こるとされています。寝返りが打てない赤ちゃんの顔がごく浅い水が溜まった場所についてしまうだけで、顔を持ち上げられず溺れてしまうことがあるのです。たとえば、浅く水を張った簡易プールで赤ちゃんと遊んでいて、少し目を離したすきにうつ伏せになってしまう、それだけで命に関わることがあります。これは水遊びに限らず、お風呂場やトイレ、水道まわりでも同様に注意が必要です。
2. 溺れるときは一瞬で、極めて静か
溺れるときは、驚くほど一瞬です。わずか20秒ほどで命に関わる事態になるというデータがあります。公共プールのように大人の目が多くある場所も、例外ではありません。むしろ「人がたくさんいるから誰かが見ているだろう」という思考こそが最も危険です。たとえば、3歳や4歳の子どもがプールサイドを走っていて、足を滑らせて落ちてしまったとします。混雑したプールでは、水しぶきも目立ちにくく、すぐに気づくことができません。実際に「1分もしないうちに気づいて探し始めたのに、見つけたときにはすでに水中だった」という事例も報告されています。
3. 泳げる人でも安心はできない
溺水した子どもの約6割が「泳ぎ方を知っていた」という驚くべきデータがあります。また、5歳から13歳の子どもの不慮の事故による死因の第2位は溺死であり、自動車事故に次ぐ多さです。泳ぎ方を学んだらより深いところに行ってみたい、より流れがあるところに行ってみたい、と思うのは子どもの自然な好奇心ですが、泳げるからといって安心してしまうのはとても危険なのです。
では、どうすれば溺水や溺死を防げるのでしょうか?
▪️ 環境調整
家庭用プールがある場合は、必ず高さのあるフェンスを設置しましょう。足場となるものがなく、横桟のないタイプを選び、子どもが登れないように工夫します。プール全体をぐるりと囲み、どこからも勝手に入れないようにすることが大切です。
また、できるだけ目立つ明るい色の水着を着せることも有効です。人が多い水辺では、自分の子どもを見失ってしまう可能性があります。水面と見分けがつきにくい青い水着は避け、遠くからでも目を引く色を選ぶことで、視認性を高めましょう。
さらに、ライフジャケットの着用も重要です。全ての子どもに着用が望まれますが、特に5歳以下の場合は必ず着用させるよう推奨されています。
▪️ 保護者の監視
子どもはほんの一瞬で溺れてしまいます。そして、静かに溺れていくのです。何があっても目を離さないでください。混雑している場所では、子どもを見失うリスクがあります。できるだけ監視しやすいエリアを選び、常に注意を払いましょう。「一瞬たりとも目を離さない」、これが基本です。
▪️ 水泳教室と安全教育
先述した溺水した子どもの6割が泳ぎ方を知っていたというデータの裏を返せば、残りの4割は泳げないことが要因だったともいえます。泳ぎ方を学んでおくことに越したことはありません。水泳教室の指導内容に、水の安全に関する指導も含まれているとベストです。英語圏では「Water Safety Code」という溺水防止のガイドラインが知られています。ぜひ、以下に挙げる4原則を覚えておきましょう。
⚫︎ Float(浮く)
⚫︎ Stay Together(一緒に行動する)
⚫︎ Call 911(緊急時には通報)

















