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『Results』

ゆるゆると動く三角関係 1 米国インディ映画らしいラブ・コメディで、脚本/監督はアンドリュー・ブジャルスキ。この名前で「ほーっ」と思う人はかなりの映画通だ。 舞台はヘルス・ジム、主人公は3人。離婚後、突然大富豪になってしまったダニー(ケヴィン・コリガン)と、彼の美人トレーナーのキャット(コビー・スマルダーズ)、そしてジムのオーナーでキャットの元カレ、トレヴァー(ガイ・ピアース)だ。 豪邸に一人で住み、金の使い方が分からないダニーは、健康的な身体を作ろうとキャットを個人トレナーとして雇うが、ピザなど食べてやる気を見せない。やる気まんまんのキャットは我慢強くダニーの元に通うが、ある晩ダニーの誘いに乗って一夜を共に。その後、トレーニングよりも彼女に執着を見せるダニーに嫌気がさしたキャットは逃げ出し、彼女とは元よりワケありだったトレヴァーは客である富豪のダニーを逃したくないし、キャットの気持ちも気になって仕方がない……。 キャットをめぐる三角関係の話だが醜い嫉妬劇はなく、恋の行方というよりは3人の関係がゆるゆると動くロープのように変化していく様子が描かれていく。「ねえ、メイクアウトしない?」と大声でトレヴァーに声をかけるキャットのサバサバした様子など、今時のジムを舞台にした大人同士の出会い/関係ってこんな感じかもしれない。セリフのおかしみ、リアリティこそが本作の身上だ。 ブジャルスキは「マンブルコア(台詞をもごもご喋る映画のスタイル)の父」と呼ばれ、2000年代のインディ系映画の一つのジャンルを代表する監督だ。マンブルコアの特徴は低予算で素人の役者を使い、若い主人公らの狭い日常世界を描くというもので、莫大な予算と特撮を駆使して作られるハリウッド映画のアンチとして、生まれるべくして生まれたジャンルと言えるだろう。 本作はそんな彼の作品の中ではベテラン俳優を使っている点で新境地と言えるが、主人公たちがマンブルしている感じは初期の作品と驚くほど似ている。なるほどブジャルスキはこういう世界を描きたかったのか、と納得。巧い役者を使ったことで、彼の作品世界がくっきり立ち上がった。 ブジャルスキは、インディ系でスタートしてハリウッドの大作へと「ステップアップ」していく監督が多い中で、独自の世界を守りつつ、少しづつ自分の世界を広げていくタイプのようだ。先輩には『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイターがいる。好みが明確に分かれるジャンルであるが、これからのブジャルスキ監督がちょっと気になってきた。 上映時間:1時間45分。シアトルは5日からSundance Cinemas Seattleで上映中。 [新作ムービー]

映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。