子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
ホリデー・ストレスに負けないで!親子でできる3分の瞑想法
今年もホリデー・シーズンが近づいてきましたね。サンクス・ ギビング、その後はクリスマスにお正月と慌ただしい期間に突入します。家族や親戚との大切な時間をゆっくりと味わって過ごせるのが理想ですが、実はこの時期、多くの人が逆にストレスを抱え込んでしまうもの。いつもの子どもの世話や家事、仕事に加えて、ホリデー・ディナーの準備、カードやプレゼントの買い物、さらに義理親に気をつかってストレス度がもっとアップしてしまうなんてことも。そこで、今回は親子共にホリデー・ストレスに負けないための心作り、「マインドフルネス・ メソッド」を紹介します。
マインドフルネスとはひと言で表すと、「今ここ」にいる状態に注意を向け、現実をあるがままに客観的に受け入れること。ちょっとした練習で誰でも簡単に習得でき、不安や否定的な感情にとらわれた心を落ち着かせるのに効果的なセラピー・ メソッドとして、欧米で爆発的に広まっています。マサチュー セッツ大学のジョン・カバット・ジン教授が仏教の瞑想法からヒントを得て、1979年にマインドフルネス・ベースド・ストレ ス・リダクション(MBSR)というプログラムを始めました。ジン教授は、仏教の開祖であるゴータマ・シッダルダ(釈迦)が行っていた瞑想法を受け継ぐビルマのサヤジ・ウ・バ・キン氏に 教えを受けたサティア・ナラヤン・ゴエンカ氏のヴィッパサーナ瞑想に出合い、この瞑想法をセラピーに取り入れたのです。MBSRは現在、全米に広まり、多くの学校や刑務所、病院、軍施設などで導入されて、驚くような効果を上げています。
最新の研究では、マインドフルネスをベースとしたセラピーが、抗うつ剤の服用と同じくらい、うつ病の再発予防に効果的であるとも発表されました。そのマインドフルネス瞑想の中でも、今回はたった3分間で簡単にできる「ボディー・スキャン瞑想」を紹介します。まず、楽な姿勢で椅子に座り、目を閉じてください。そして、椅子にかかっている自分の体の重さを感じます。次に数回ゆっくり深呼吸をし、酸素が自分の体に入ってくる感覚、また息を吐くたびに体がリラックスしてい く感覚を感じてください。足の裏に注意を向け、じゅうたんやカーペットなど床に足がついている感覚(重さ、圧力、温度など)を感じます。次に椅子に接している太ももの裏側、そして背中の感覚も同じように感じます。また、お腹に注意を向け、 深呼吸をするたびにリラックスしていく様子を感じてください。次に、手と腕、肩に注意を向け、順番にリラックスさせていきます。首、喉、顎、顔の筋肉も深呼吸するたびにリラックスさ せ、最後に全身に意識を向けたまま、深呼吸をしばらく続けま す。十分リラックスしたところで目を開けてください。このボディー・スキャン瞑想、子どもと一緒にできますので、ぜひ試してみてくださいね。うまくいかなくても大丈夫。完璧にやろうと思わず、ありのままを感じること。ほんの少しでも体の声を聞くことができればOKです。
さて、なぜこのようなシンプルな瞑想法が注目され、スト レス軽減だけではなく、うつ病や不安障害、またPTSDの患者など多くの症例でも効果を上げているのでしょうか?それは、こうした心の病気の多くが、過去や未来のことを考えて絶望感や不安感にとらわれることで起きるからです。マインドフルネスの中核をなすのは「今ここ」。その心の状態では、過去や未来を考えることで生まれるストレスを感じにくいのです。
実は、こうしたマインドフルな心の状態を簡単に保つことができるのが、子どもです。小さい子どもは時間の概念があまり発達しておらず、1カ月以上前のことでも「昨日」と言ったり しますよね。未来や過去をあまり考えず、今を感じている状態が長いのです。 私たちも子どもたちを見習って、今この瞬間を楽しむということが、ストレスに負けない柔軟な心をつくる秘訣なのかもしれませんね。
次回は、日照時間が短いシアトルの気候がもたらすうつ症状、そして社会問題化しているティーンの自殺について考え てみたいと思います。
12月2日(土)10:30am~12pm、ピカ ケスクールにて「マインドフルネス」をテーマに ワークショップを開催(料金:$10)。予約・詳細 はhirokonagano@gmail.comまで。